2015/09/21

複数の解釈が成り立つのが万葉集の面白さ


万葉集は謎めいている。「主題」とか、「定説」というものの成立が難しい。これは明らかに違うという読みはあるが、「これはアリなんじゃない」という読みも多数提出され、そのどれもが魅惑的なのだ。
例えばこんな和歌がある。
春の野にすみれ摘みにと来し我そ
野をなつかしみ一夜寝にける
現代語訳すると、
春の野原にスミレを摘みにきたのだが、野辺の美しさに心ひかれて、ここでつい一夜を明かしてしまった。
という意味になる。
当然、読み手は
なぜ男がすみれを摘みに?
一晩寝るって、野宿?
いったいなぜそんなことを?
という疑問が湧き上がってくる。
で、ここから先はご想像にお任せして、となるんだけど、文献を漁ると、諸説紛々なところがまた面白い。ある歌人は、この歌は恋の歌で、すみれを女性に見立てていると主張していたり。
こういう類の作品解釈は、きっと永遠に定説は生まれないだろうし、むしろあれやこれやと想像を逞しくして読んでいくような楽しみ方こそが醍醐味なのだろう。
授業では、ただ意味をとらせるだけでなく、その先を想像していく、そして色々な説を参照させ、比較させて、自分の読みや定説を考えるような読み方をすることができる、そんな学習が可能なのが万葉集というテキストだ。