2012/12/14

 『竹取物語』を書き継ぐ~物語の祖『竹取物語』から「物語のしかけ」を学ぶ~


今日は大学の1年生が教室にやってきて授業見学(観察実習)を行った。
授業内容は「竹取物語」の「五人の貴公子」に続く「第六の貴公子」を創作するという活動。

いきなり創作させるのもきついので、次のような例を提示し、発想を刺激するように配慮した。

「第六の貴公子」登場人物例 
 ア 酒作の皇子(さけつくりのみこ)
 イ 子持の皇子(こもちのみこ)
 ウ 左大臣明之明星(さだいじんあけのみょうじょう)
 エ 中納言小倉大福(ちゅうなごんおぐらのだいふく)
 オ その他(               )←自分で自由に考える

かぐや姫の「難題」メニュー

A 打ち出の小槌
B じょうはりの鏡
C くさなぎの剣
D 天の羽衣
E 魔法のランプ
F そのほか自由に考えたもの。

これらの例を組み合わせて、次のような構成を考えた。

 ○求婚者は
 ○どんな人(性格)
 ○姫の難題
 ○難題はどこにある
 ○求婚者は難題をどうしたか
 ○その結末は

このような例を出して物語を構想していく。
授業をやってみてわかったことだが、これらの「難題」のもつ、イメージを喚起させる力は結構大きい。どんな難題を選んだかによって、話の展開が広がっていくようだ。

たとえば浄玻璃の鏡をゲットするためには地獄に行かなくてはならない、地獄に行くためには……というように話がどんどんと引き出されていく。

生徒の中には、これらの難題では飽きたらず、いろいろな難題をひねり出していた。

たとえば、
世界で一番美しい美女
たぬきを化かすときに使った木の葉
空飛ぶ絨毯
どこでもドア
ルシファーの角
ヴォルデモートの杖
などなど。いろいろ難題を考える作業をとても楽しそうに行っていた。

あと1時間かけて創作の文章を書いていくが、どんな文章ができるか楽しみだ。

※指導案は次の通り。

       1年D組 国語科学習指導案
                                                     

Ⅰ 単元名  『竹取物語』を書き継ぐ~物語の祖『竹取物語』から「物語のしかけ」を学ぶ~
                                                
Ⅱ 単元の考察
 本単元では、『竹取物語』の表現の工夫を味わい、その表現の特徴を参考にして『竹取物語』の一部分を創作する言語活動を行う。この言語活動を通して、古典作品の豊かな物語世界を味わうことと、描写や構成などを工夫して物語を書く力を高めることをねらっている。
 古典学習では、古文を音読するなどして触れることはもちろん重要な学習内容である。しかし古文を読むことのみに限定すると、十分な量や内容の古典と出会わせることが難しくなる。古文読解中心の学習内容では古典の楽しさを感じさせることは難しいだろう。そこで、現代語訳や解説などの助けを借りて、古典の持つ豊かさを味わわせる工夫が必要となる。本単元では原文と現代語訳、解説が添えられた『ビギナーズクラシックス 竹取物語』の全文を学習材として取り上げ、古典作品を丸ごと味わうことができるように配慮した。近年はこのような解説付きの古典作品の書籍が多数刊行されている。本単元では、そのような解説付きの古典の本に触れる機会としての意義もあると考えている。
 『竹取物語』は言うまでもなく日本最古の物語である。そしてその表現は、神話や民話、昔話に通じる要素(モチーフ)や話型(パターン)を多分に含んでおり、まさに物語の源流というべき作品である。化生説話、至富説話、求婚難題説話、そして羽衣説話などの話型や、昔話にも通じる要素が重層的に含まれていることが大きな特徴である。柳田國男『竹取翁考』によれば、『竹取物語』のこの複雑な構造は、複数の作者によって作られているからと考えられるという。『竹取物語』では、羽衣説話と求婚難題説話の二つが合体して構成されているが、特に、求婚難題説話(「五人の貴公子」の場面)は「説話の自由区域」とも呼ぶべき部分であり、語り手ごとに「貴公子」を即興的に創作して物語を挿入し、聞き手を楽しませていた部分であったと考えられるそうだ。
 本単元では、この『竹取物語』の構造に着目し、求婚難題説話の部分である「五人の貴公子」に「六人目の貴公子」を書き継ぐ創作文を書くという、単元を貫く言語活動を設定した。
 もとにある作品に創作文を書き継ぐためには、作品全体を見通し、作品の特徴をつかんで矛盾や破綻のない表現にすることが必要となる。創作に当たっては「五人の貴公子」の場面に見られるモチーフ(難題が出される→難題に挑戦、もしくは偽装→失敗、もしくは偽装が露見)を的確に押さえる必要がある。また、物語の表現様式の特徴である荒唐無稽な展開や誇張された表現、典型化された人物設定などの表現の特徴も押さえることが必要である。これらの表現の特徴を「物語のしかけ」と名付け、創作文を書く前に探求する活動を行う。また、創作文を書く際には、「五人の貴公子」の構成や表現の特徴を押さえた上で、第六の貴公子の人物設定やかぐや姫が与えた難題について、自由な想像力を発揮して物語を創作し『竹取物語』の世界を遊びたいと考えている。
 古代人のおおらかなロマンと豊かなファンタジーが横溢した『竹取物語』の表現を読み解き、それを創作文として継承・発展させていく学習は、古典作品の魅力に親しむ楽しい学習となることだろう。

(1)単元のねらい
 ○『竹取物語』の世界を楽しんで読み、物語を創作しようとしている。    〔関心・意欲・態度〕
 ○『竹取物語』の世界をいかして、表現を工夫して物語を創作することができる。〔書くこと〕
 ○物語の表現の工夫について考え、物語の世界を味わうことができる。            〔読むこと〕
 ○古文のリズムを味わいながら古文を音読することができる。            〔伝統的な言語文化〕

(2)単元の言語活動
 ○『竹取物語』の表現の工夫について読み取り。交流して共有する。     〔読むこと〕
 ○『竹取物語』の表現の工夫を参考にして「第六の貴公子」を創作する。〔書くこと〕

(3)学習材
 ○「物語の始まり―竹取物語―」(教育出版 中学1年教科書『伝え合う言葉』所収)
 ○『ビギナーズ・クラシックス 竹取物語(全)』角川ソフィア文庫

(4)指導計画(8時間扱い)
 ①『竹取物語』について知る。冒頭の文章を暗唱する。
 ②教科書に掲載されている古文を音読する。『ビギナーズクラシック 竹取物語』を読む。
 ③『ビギナーズクラシック 竹取物語』の前半を読み、「物語のしかけ」を読み解く。
 ④「石作の皇子」の場面を音読する。
  「五人の貴公子」の構成や「物語のしかけ」をジグソー形式で分担して読み解く。
 ⑤「五人の貴公子」のそれぞれについて、分担して読み取ったことを、交流して共有する。
  ⑥「第六の貴公子」のプロットを考え、創作する。                                  (本時)
 ⑦「第六の貴公子」の創作を完成させる。
 ⑧創作した「第六の貴公子」物語を読み合う。単元の学習を振り返る。

Ⅲ 本時
(1)本時の目標
 ○『竹取物語』の世界をいかして、「第六の貴公子」の物語の構成を考えることができる。

(2)本時の展開
○学習課題を把握する。

○第六の貴公子を創作するための基本的枠組み(パターン・要素)を確認する。
  ・話のパターン
難題が出される
→難題に挑戦(もしくは偽装)
→失敗(もしくは偽装が露見)
→落ち(語源につなげる)
○貴公子の名前や難題から、どのような話になっていくかイメージをふくらませる。
○貴公子と難題を決め、構想を考える。
○「第六の貴公子」の物語を書く。