2014/08/07

裁判を傍聴してみた

夏休みで平日時間がとれたので、以前から興味のあった裁判の傍聴に行ってみた。
もし裁判を見に行きたいという奇特な人がいたなら参考にして欲しい。

今回訪問したのは霞ヶ関の東京地裁。
裁判傍聴ビギナーは地裁がおすすめらしい
最高裁は形式的な文書の読み上げとかが多く、あまり面白くないそうだ。
東京地裁はとても多くの法廷が開かれているので、いつ行っても何かの裁判は行われていて傍聴できるのがメリットだ。

なお、裁判員裁判などの日程については、「裁判員裁判日程カレンダ−」のサイト上で公開しているものもある。

まず、裁判所に入ると空港のような荷物検査を通過する。
正面のカウンターに人が群がっているのでそこに行くと、開廷しているリストを読むことができる。
リストには、法廷の番号、犯罪名と容疑者の名前、そして裁判の過程(判決とか審理とか)が書いてある。(今日見た刑事裁判のリストは麻薬や覚醒剤が6~8割、強盗、強姦などが1割、残りはその他といった感じだった。民事はサラ金が多い印象)

このリストを見て、法廷まで行く。(東京地裁には数え切れないくらいの法廷がある)
(人気のある裁判は傍聴券を発行するらしいが、特に今日は傍聴券を発行するような裁判は行われていなかった)
法廷の出入りは自由。途中で出ていっても良い。
法廷の大きさはさまざまだ。最初に行った法廷は、教室くらいの大きさで、傍聴人が30人くらいは収容できる広さだった。次に行ったのはその半分くらいのコンパクトなものだった。
法廷の中身は、火曜サスペンスとか映画などでイメージするのとほとんど同じ。
正面には法服を着た裁判官、その真ん中に容疑者が横向きで座っている。両サイドには弁護士と検事が向かい合って位置する。
法廷に入ると「おお、テレビドラマみたい!」って思わずつぶやいてしまいそう。

私が見に行った裁判は、はじめは強姦致傷、次が強盗致傷のものだった。
どちらの被告もなぜかジャージを着ている。そして見るからに悪いことをいっぱいしてそうなお兄さんだった。目が合いそうなのがちょっと怖い……。
弁護士も検事も、今回は比較的いきのいいワカモノだった。裁判官に向かって、かっこよくまくし立てていた。(これもテレビドラマっぽかった!)
裁判は基本的には法律用語なので時折難しい言葉が出てくるのが聞き取りにくい。「……と思量します」のように。だけども、犯罪は至って単純なものなので、その辺は難しい言葉を聞いてもある程度はイメージができた。
裁判官は人のいいおじさんといった風情で、時折質問を挟む。
「時間は30分までですが、全部読むんですか?もうちょっとはしょって説明してくれませんか?」
「NPOをNOPと書いてあったのを訂正してくださいね」
「今のは弁護人の意見と言うことでいいですか?」
「最後に、あなた(被告)に発言する機会があります、いいですね」
という感じ。
二つ目に見に行った、強盗致傷の事件を起こした黒いジャージのお兄さんは、窃盗などの常習犯で以前も一度執行猶予を食らって犯罪を起こしている。今回も、牢屋から出てきたんだけど、すぐに失業してしまい、それで包丁を手にして女性を襲ってしまったらしい。
女性にはほとんど怪我がなかったのが幸いだが、20~30代くらいの若い男性の後ろ姿には、すこーしだけ社会の縮図というか、人生を垣間見た気持ちになった。

それほど重大な事件ではなさそうな雰囲気だったが、それでも法廷は独特の緊張感がただよい、ディベートのような言葉の応酬が見られてとても勉強になった。
※これが裁判員裁判だったら、もっとプレゼンテーションとか大々的にやって分かりやすいものらしい、重大事件も多いし。今度は裁判員裁判を見に行きたい。

日常生活では滅多にお世話になることのない裁判所だけれども、ひょっとしたら生徒たちが裁判員に選ばれることがあるかもしれない。また、裁判で交わされている言葉について知ることが必要だと思って傍聴してみたわけだが、弁護士と検事とのディベートの生の現場を見ることはとても貴重な機会であった。
もう少し裁判の知識を身につけてから行くとさらに内容も理解できて勉強になると思った。

帰りに地下の売店に寄ってみた。
売店の書店には法律関係の本がたくさん売られている。
こんな本もあった。

季刊「刑事弁護」(2500円)特集は「裁判員裁判をどう戦うか、弁論技術」(「月刊総合教育技術」のようなものか??)
こんな本も売っていた。


「弁護のゴールデンルール」
この本はすごい。聴き手の心理を巧みに掴む弁護の技術について詳細に分析している。
ディベートなどですぐに応用可能だろう。
たとえばこんな感じ。
○伝えることを意図していない視覚的情報は決して伝えるな
(驚いているように、悩んでいるように、必死であるように、
人を操っているように見られてはいけない)
○弁護士が法廷で自分の意見を述べることは許されない
○最終弁論では証拠に基づく事柄しか述べることができない
○事実認定者を楽しませよ
(彼らに物語を伝えよ、始まりと中間そして結末を考えよ、流れを持続せよ)
○削れるところはすべて削れ
○自分の声の音量を知れ、話すスピードと音質を変化させよ、
タイミングと中断の力を知れ、音量を上げる時は細心の注意をせよ
○好人物であれ
○共感を与えよ、事実認定者と同化せよ
○要求する代わりに招待せよ、教える代わりに提案せよ
○予め自分のほしい答えを考えてその答えだけを得られる質問を組立よ
○事実そのものを扱っているのではなく証人が事実であると
信じているものを扱っていることを忘れてはいけない
○”Yes or No”で答えを要求する際には注意せよ
(取調べの雰囲気を取り除くため慎重に)
○決して証人と論争してはならない
この二冊は思わず購入したことは言うまでもない。
さらにさらに、最近は裁判員裁判の啓発用にいろいろな資料を用意しているらしく、ただでいろいろなパンフレットやDVD資料をいただくことができた。

下記はホームページでも公開中で見ることができる

さまざまな裁判員裁判広報用の動画も公開されている。
アニメーション「ぼくらの裁判員物語」

(内容)高校生の恋愛を軸にした親しみやすいストーリーをベースに,刑事裁判及び裁判員制度のポイントを分かりやすく説明したアニメーションです。(あらすじ)敬慈高校に通う別所翔太。彼は同じクラスの栗原茜に片思い中。告白する機会をうかがう別所。そんなある日,ふとしたきっかけで,別所は栗原が裁判官に憧れ,「裁判員制度」に興味があることを知る。「裁判員制度」とは,国民のみなさんに裁判員として刑事裁判に参加してもらい,被告人が有罪かどうか,有罪の場合どのような刑にするかを裁判官と一緒に決めてもらう制度。栗原と親しくなるためのきっかけづくりにと「裁判員制度」について,幼なじみの進藤進とともに調べはじめる別所。図書管理の涼子先生から,『模擬裁判 -裁判員制度はこうなる-』という教材DVDを借り,見てみることに。そして,ひょんなことからDVDを一緒に見ることになった別所と栗原。それまで遠かった別所と栗原の距離は近づいていく…。どうなる?別所の恋の行方?
……恋の行方って関係あるか?

これらも、何かの機会に活用できるかもしれない。