2013/06/09

教育実習で何を教えられるか、教えられないか

毎年何人もの教育実習生の指導をしている。
現在勤務している学校では四週間の実習期間だが、はたしてたった四週間で何を学べるか(教えられるか)正直途方に感じている。
が、それでもたった四週間なんてお遊びだ、意味がない、とも言ってはいられない。
現時点での私の考えを書いておきたい。

教育実習の目的
・教職選択を考えるきっかけとする
・よい教師として成長していくための方向づけをする

教育実習の目標
1、自分を知ること……教師の適性を考えるきっかけとする
2、教育の現場を知ること……学ぶ立場から、教え、育てる立場への視点の転換
3、力の付け方を知ること……どうやって力量をつけていけばいいかを知る。
4、子どもとの基本的な関わり方を知ること……子どもを大切にする教師になって欲しい


1、自分を知ること
大学卒業後、教師の道を選ぶにしてもそうでないにしても、後悔しないようにして欲しいと思う。
自分は本当に教師に向いているのか?
教師の仕事に生きがいを感じるか?
一生の仕事として選んで悔いないか?
など、真剣に考える機会にして欲しいと思う。
観念だけでイメージしていた教育現場と、実際とでは大きく異なり、ショックなことも多いだろう。
それでも、数ある職業の中で、この教師という道を選び、幸せな人生をイメージできるという人はぜひ選択して欲しいと思う。
(ちなみに、本校に来る実習生はみんな教員になるわけではない。おそらく採用試験を受けるのは半分か、それ以下だろう。しかし私は教職志望だろうとそうでなかろうと区別をしていない。そういった器用な使い分けが私にはできないと言うことと、実習の時点では先生になりたいと思ってなくても、後になって教員の道に進みたくなる人がいるかもしれないからだ)

と同時に、子どもとの関わり方のスタイルを自覚して欲しいと思っている。
やはり、この仕事は自分のスタイル(というか人柄というかキャラクターというか、ようするに属人的な何か)に大きく左右される。
どんなスタイルで子どもと接しようとしているか、それに自覚的であって欲しいと思っている。
きっと教育実習中に振る舞ったそのスタイル(の萌芽)はその後の教師人生(もし教職に就くとして)のヒントとなるだろうからだ。


2、教育の現場を知ること
将来教師になろうがなるまいが、教育の現場を知ることはとても大切なことであると思う。
教育実習に来たからには、中学校とはどういうものか、リアルな姿を知って欲しいと思う。
現場はどれくらい泥臭いものであるか、そのなかで先生方はどんな努力をしているかについて知って欲しいと思っている。
やはり、生徒ではなく教師として教育の現場に立たないとわからないことは山ほどある。
その逆に、学校外の世界からみたらおかしなことや文化の違いもイヤと言うほどあるだろう。
そういう違いを知って欲しいし、考えて欲しいと思っている。
だから、どういう考えでさまざまな教育活動が行われているか、教師の意図をできるだけ伝えるようにしている。


3、力の付け方を知ること
たった数週間の実習、数時間の授業で、一人前の力なんてつくわけはない。
だからといって必要とされるスキルすべてをとりあえずすべて教えるなんてこともできない。
だから、教師になったときに自立して学び、伸びていけるような人になってもらうために、力の付け方は教えておきたいと思っている。
まず、
・授業が上手くいかないのは教師の責任であること。逆に工夫次第では上手くいくこともあること。だから、絶対に子どものせいにしないことを基本的な心構えとしてたたき込み、
・子どもを見ること、知ろうとする努力を怠らないこと。子どもの自然な思考の流れとか、心理を理解するように努めること。
・教材と真っ正面から向き合うことのなかに答えがあること
・さまざまな教育技術がある。それらを貪欲に学び、使いこなせるようにすること。
・常に視野を広くもち、教師自身の好奇心や学ぶ気持ちを持ち続けるようにすること。
などを伝えたいなと思っている。


4、子どもとの基本的な関わり方を知ること
さまざまな教師の、子どもとの関わり方のスタイルを知り、そのなかでどれが自分のスタイルとして取り入れられそうか、考えて欲しいと思っている。
(と同時に、中学校ではさまざまなスタイルの先生が、お互いにそのスタイルを尊重しあい、生かし合ってチームワークで子どもを育てていると言うことを必ず伝えるようにしている)
とくに私の中核的な教育観でもある「沿いつつずらす」スタイルについて、伝えていきたいと思っている。さまざまな場面で私が子どもとどのように関わろうとしたか、なるべく伝えるようにしている。

子どもを見下し、バカにするような教師になって欲しくない。
サルまわしのように、子どもを意のままにあやつることに楽しみを見いだすような教師になって欲しくない。教師の都合で子どもを利用したり不幸にするような教師になって欲しくない。
どんな教師のスタイルを選択しようとも、子どもを大切にする教師になって欲しいと思う。
もちろん、こんなことはいちいち取り立てて教えはしない。
大変不遜な言い方だけど、私自身の姿からそういうものを感じて欲しいと思っている。