2014/09/19

「読書コミュニティ」としての学級づくり~広がる多様な「ネットワーク」、豊かに深まる「コミュニティー」の形成を目指して~

1 「コミュニティ」としての学級

 学級は、多様性の尊重された「コミュニティ」であるべきだと考えている。コミュニティは多様なネットワークでコミュニケーションを交わし合うことを通して、お互いに認め合い、支え合う共同体のことである。クラスの多様な個性がつながり合う中で、認め合い、伸ばしあう学級が理想である。
 私の学級担任としての思いは「個を伸ばすコミュニティづくり」という一言に尽きる。
 とくに、中学生という思春期の段階の生徒は、ややもすれば集団の中に埋没し、できるだけ目立たず、周りにあわせ、自分の個性を消そうとする傾向があるのではないだろうか。
 「個」を伸ばしあい、「違いを認め合う」関係性の構築こそが学級の理想である。そのために、特に中学校では学級づくりにおいて、子どもたちどうしの「ネットワーク」が自然に広がり、コミュニケーションが豊かに交わされ、「コミュニティ」が深まっていく環境づくりや機会を意図的に設定する必要がある。

2 「読書コミュニティ」の意義
 
 近年「読書コミュニティ」という言葉が聞かれるようになった。本への愛着や読書活動を通して、人と人のネットワークを築き、関係を深める社会的実践である。読書活動によって大人とつながり、地域とつながり、そして世界へとつながっていく取り組みである。「読書コミュニティ」の実践では、本を数多く読んだかと言うことよりは、本を通してどのように社会に参加していくか、どのように他者とコミュニケーションをしていくかという点に重点が置かれる。この「読書コミュニティ」の発想は、小さな社会ともいえる学級においても有効な視点である。本の持つ力、読書活動の持つ効果を通して、クラスの中の人と人とを結びつけていくのである。


本を通して世界と出会う―中高生からの読書コミュニティづくり (シリーズ読書コミュニティのデザイン)



3 学級づくりとしての読書活動の視点

 「個」を伸ばしあい、「違いを認め合う」関係性の形成に、読書活動はどのように関わっていくのだろうか。
 読書は本来、「個」で行うものだ。読書の傾向は人それぞれであるし、同じ本を読んでも全員が同じ感じ方をすることはほとんどない。しかし、このような「個」の多様性が生かされる読書という特質こそが、「個を伸ばすコミュニティ」づくりに生かされるのである。
 そのような「個を伸ばす」学級づくりを進めるためには、読書活動において、教師が次のような視点を持っていることが必要だと思われる。

A 興味・関心を重視する
 一人ひとりの興味や関心をできるだけ重視し、それが反映されるような読書活動にする。

B 違いを鮮明にする
 読書の傾向や感想は人それぞれである。それぞれの違いが鮮明になる活動を取り上げる。

C 交流し、認め合う活動をする
 読書を通して得られた感じ方を、さまざまな手段で交流し、認め合う活動を行う。

 Aの興味・関心を重視すること、「個」の思いから出発することは読書活動において重要な視点である。どんな生徒も意欲的に取り組むことができるような学習の場づくりや個に応じた支援が必要だ。読書活動に関して教師の思いが強すぎるあまり、生徒の興味や関心を無視するような活動になってしまわないように気をつけたいものである。
 Bの違いを鮮明にするという点は「個」を伸ばしあうために欠かすことのできないポイントである。それぞれの好みの違い、価値観の違い、感想や解釈の違いをまとめてしまうのではなく、むしろ個の違いを鮮明にし、違いを楽しむような読書活動にするのである。 
 Cの交流し、認め合う活動を、教師が意図的に取り上げ、工夫していくことも重要である。クラスのメンバーで、とくに普段関わりの少ない人とでも自然に関われ、コミュニケーションが生まれるような交流の場を読書活動の中で効果的に設定することが重要だろう。