2014/09/26

「夏の葬列」の授業№4 続き話を創作する~よい読者がよい書き手を育てる~

今日は創作学習の前哨戦、夏の葬列の続き話を作る学習に取り組んだ。
創作のアプローチを四つに絞り、それを「創作の扉」としてワークシートを作成した。

創作の四つのアプローチ
一つめの「創作の扉」は「設定の扉」
自分が書きたい場面の、時間・場所・登場人物を整理する。
子どもたちが考えた時間の例として、一日後、一〇年後などさまざまな時間設定が出てきた。

二つめは「登場人物の扉」
登場人物の性格や容姿などをウェビングの形式で書き出させた。
たとえば、「彼」の人物像として、自己中心的、思い込みが激しい、弱虫、などの要素が出された。

三つ目が「プロット(構成)の扉」
続き話の構成を四コママンガの形式でまとめさせた。(絵が苦手な子は文章の説明でもよいとした)
また、プロットを通してどんなことを伝えたいか、主題(テーマ)を一言でまとめさせた。

四つめが「文章表現の扉」
「夏の葬列」の文章や展開で特徴的だったものを抽出し、自分が作る文章で活用できるように提示した。
次の中から、活用したい「表現のワザ」を選択する。
・回想〔タイムスリップ)
・なぞと解決
・実は……だった!
・皮肉な偶然
・伏線・暗示
・色彩の使い分け
・記号(……・――)の活用
・あえてのひらがな/カタカナ
・独白(モノローグ)
・比喩〔直喩・隠喩)

これらの四つの扉を開きながら、創作の構想をまとめていった。
構想がまとまったら、そのワークシートを周りの人や教師に見てもらい、ある程度考えが固まったらいよいよ創作に取りかかる。
今回は練習的な意味合いもあるので、原稿用紙二枚に限定した。二枚であればそれほど負担感がなく、だれでもこの課題をクリアすることができるという見込みだ。


書く力を高める「読者」の存在
さて、生徒が持ってきた構想を見ながら、私があれやこれや突っ込みを入れるというやりとりが行われるんだけど、この対話がとっても面白い。子どもたちの発想に何度も舌を巻かされた。
作文指導の時、教師としてのわたしは、作者である生徒にとって、どうすれば「よい読者」になれるのかということをつねに考えて話を聞いている。
生徒が持ってくる構想は、はじめは稚拙だったり言葉足らずだったりする。しかし、その構想の良さや魅力、生徒が伝えたいと思っているもやもやを、何とかして形にして表現できるように、私は問いかけ、そして引き出す。
それが、ある段階では、私は「ものわかりの悪い読者」になりかわり、生徒の説明が足りなかったり、展開が強引だったりする点を厳しく突っ込んだりもする。

創作という行為は、なんとなく、一人だけの閉じた世界でおこわなれるものであり、そこに他者の介在する余地は全く必要ない、むしろ余計なものであるかのような物言いが評論家からされることがある。
しかし、私はそうは思わない。表現は、他者からのフィードバックを得ることで、自分の伝え方の至らなさや独りよがりな点に気づかされ、そして磨かれる。そういう他者である「読者」の存在を想定しない創作行為なんて、ほとんど何の成長もない、価値もないことなのではないかとさえ思える。
作者にとって「価値ある読者」になることができるよう、教師としての私も努力をしていきたい。さらには、そういう「作者」と「読者」との関わり合いを、創作学習の中で、子どもたちどうしでもさせていきたいと考えている。