2013/05/21

共創の交流を活かした授業作りの視点~論考「交流」その2~


「話し合いましょう」と教師が指示をしても、目的や進め方が明確でないと散漫な活動になる。
何のために話し合いをするのか、話し合いをすることで、何が、どう変わるのかを教師も生徒も意識することが必要である。さらに言えば、交流(話し合いなど)のさまざまな機能を明確に意識し、学習プロセスに即した交流を展開していくことが必要だ。
※「交流」とは必ずしも話し合いに限定されるわけではない。書き合う、読み合う交流もあるだろう。


交流のパターンと機能

A 共感的交流
・目的
良いところを認め合う交流。
相互に認め合う・わかりあう。学び合うコミュニティーを形成する交流。
・機能
他者を受容し理解する。
良いところを認め合う。
・交流例
作文の交流
文学作品の感想交流

B 累積的交流
・目的
互いに多様な意見を出し合い、ものの見方や考え方を広げる。
・機能
発想を自由に広げる。
拡散的に思考を広げる。
・交流例
ブレインストーミング
バズセッション

C 連鎖的交流
・目的
他と発想を関連させつつ発展させていく。
・機能
発想を関連づけて広がる。
連想する、関連づけをする。
・交流例
マッピング、連句、連詩

D 探索的交流
・目的
一つのテーマに沿って考えを深めたり、まとめたりしていく収束的な交流。
・機能
認識を深化する。
意見を合意形成する。
・交流例
助言を述べる、質問する。
考えをまとめる話し合い。

E 批判的交流
・目的
観点を持って相互に評価(批評)しあう。
・機能
観点に沿って評価する。
批判的思考をする。
・交流例
ディベート・相互評価

なぜこのように交流のパターンを整理する必要があるのだろうか。
交流の中には上記のさまざまな機能が混在しているのが一般的だろう。
しかし、学習(課題解決)に最も適した交流のパターンを見極め、その交流の機能を授業に生かすことができれば、学習の中に交流を有効に位置づけることができるものと思われる。

交流の機能を課題解決のプロセスにあてはめる
交流は課題解決のそれぞれのプロセスにおいて活かすことができる。
それぞれのプロセスにあった交流の機能を選び、展開させていくことが重要である。

グループで新聞を作る活動を例に挙げて考えてみよう。
はじめに、どんな記事を書くか意見を出し合う段階で話し合いをするとする。この場合、とにかくアイデアを数多く出し合う、累積的な機能を活かしたブレーンストーミングが有効である。まず、この段階では意見を否定したり絞り込むまとめることは必要ない。
十分に意見を出し尽くした後で、たくさん出たアイディアの中でよりふさわしい記事は何かを話し合い、まとめていく。この段階で、探索的な交流を意識させるようにする。
 記事が仕上がったあとは、お互いの記事を厳しい目で読み合って推敲や相互批評をする。不適切な内容や表記はここで正される。この段階では批判的な交流が活きる場である。
 最後に、完成した新聞を出版し、他のグループと交換して読み合いをする。この段階では批判は禁物である。お互いに楽しく読むことが何よりも大切にされないといけない。共感的な交流をして、、お互いのよいところを積極的に評価しあえると、この単元の学習の達成感をより一層高めることができる。
 このように、学習活動を効果的に遂行するためには、課題解決のプロセスにあわせて交流を設定し、交流がより共創的なものとなるように配慮することが大切である。

参考 学習指導要領に記載された「交流」の指導事項一覧
小学校低学年
書いたものを読み合い、よいところを見つけて感想を伝え合うこと。
小学校中学年
書いたものを発表し合い、書き手の考えの明確さなどについて意見を述べ合うこと。
小学校高学年
書いたものを発表し合い、表現の仕方に着目して助言し合うこと。

小学校では「よいところを見つける」という共感的な交流からスタートし、中学年で、それぞれが意見を述べ合うという形に発展し、さらに高学年では相手の立場に立って助言をし合う交流が想定されている。
中学1年
書いた文章を互いに読み合い, 題材のとらえ方や材料の用い方,根拠の明確さなどについて意見を述べたり自分の表現の参考にしたりすること。
中学2年
書いた文章を互いに読み合い, 文章の構成や材料の活用の仕方などについて意見を述べたり助言をしたりして, 自分の考えを広げること。
中学3年
書いた文章を互いに読み合い, 論理の展開の仕方や表現の仕方などについて評価して自分の表現に役立てるとともに, ものの見方や考え方を深めること。

中学校では「意見を述べる」→「助言する」という流れは小学校と同じだが、「評価する」というようなクリティカルな視点が交流に入ってくる。

高校国語総合
優れた表現に接してその条件を考えたり,書いた文章について自己評価や相互評価を行ったりして,自分の表現に役立てるとともに,ものの見方,感じ方,考え方を豊かにすること。
高校国語表現
様々な表現についてその効果を吟味したり,書いた文章を互いに読み合って批評したりして,自分の表現や推敲に役立てるとともに,ものの見方,感じ方,考え方を豊かにすること

高校では「相互評価」→「批評」というようにクリティカルな交流が中心となっている。