2013/05/26

「職場の先輩からは何も学べないんです」という人のための、効果絶大の研修方法


こう言ってしまえば身もふたもないけど……
どんなすごい教育書を読むことよりも、同じ学校で働くちょっと憧れる先輩の姿の方が、実際にはずっと参考になる。
そのわけは、
同じ生徒の実態を共有しているから。
ちょっと背伸びすれば自分にもできそうだから
なぜ? どうして?という質問をしようと思えばすぐにできるから
そして、実践している姿を目の当たりに見ることができるから
だろう。
料理で言うと、レシピなんかを一生懸命眺めるよりも、料理人のそばに行ってそれを見ている方がよっぽど勉強になる、ということなのだ。

だから、とても熱心に勉強会などに参加している若い先生方から「職場の先輩からは何も学べない」というような言葉を聞くと、とても残念な気持ちになる。
その人以外のみんながこう言うだろう。
「職場の先輩からは何も学べないんです」という人の、本当の問題は「いい先輩がいない」のではなく、「先輩のいいところがわからない」のだ。と。

見る力・感じる力
授業でも生徒指導でも、なんでも、教師の力量を上げるために不可欠な要素は「見る力、感じる力」だと思う。
「見る力、感じる力」を持たない人が、いくら優れた教育実践を見ても、何もわからない。
たとえば、料理が全くできない人が、コックさんの料理姿を見てもほとんど何も感じないだろう。
しかし、料理をしている人が見れば、コックさんの一挙手一投足に、どのような意味や意図があるのかを「見たり、感じたり」できるだろう。
火力はどのくらい?
どのタイミングで鍋に食材を入れるのか?
食材を鍋に入れる瞬間に、鍋をふりふりしたのはどのような意図があるのか?
調味料を入れる順番には規則性がないのか?
料理の飾り付けにはどんな配慮があるのか?
(コックでもスポーツ選手でも何でも同じだけど)
ただ、料理もそうなんだけど、やってみないことにはなかなかわからない(見えてこない)世界というのは確かにある。

ある実習生のエピソードから
本校の実習は4週間だ。最初の2週間は授業観察、その後2週間が授業実習となる。
2週間の授業実習が終わると、ちょうど実習期間も終わりで「さよならー」となってしまう。
しかし、時折授業実習が早めに終了し、残りの期間、先生方の授業を参観できるようになることがある。
そんなとき、実習生が、皆、口を揃えて言うのが「授業を見る目が全く変わった」と言うのだ。
当たり前のことだが、やってみてはじめてわかることがある。やってみないでいくら「観察」をしても、どこを見たらよいかわからないので、とりあえずただぼんやりと眺めることになる。
つまり、一度授業をやってみた実習生には「授業を見る力」が付いたのだ。
問題意識、当事者意識を持って授業を見るようになると、スポンジが水を吸い込むようにぐんぐんと吸収していくようになる。
(こういう風に授業を見たらよいよ、というアドバイスなんかよりも、実際に自分で授業をやってみてから、指導教官の授業を見させた方がずっとずっと授業を見る目が鋭敏になるようだ)

ジプシー法のすすめ
……余談になるが、そう考えると、初任者層の研修で最も必要なのが「当事者意識を持って、モデルとなる授業を見る」経験ではないか。おっかなびっくり、自分で少しずつ授業をやってみながらも、そのモデルとなる先輩の先生の授業実践を観察させるのだ。
(授業でなくても、生徒指導でも学級づくりでもなんでも。
例えば、ジプシーのように、初任者がいろいろな先生のクラスや授業に飛び入り参加し、授業をしてみるなんてどうだろう)
「少しずつの授業」は、ここでは「授業を見る力」を高めるための噛ませ犬のようなものだ。……子どもには全く失礼な話だと思うかもしれないけど、実際には授業をろくに見せもしないで、素人同然の初任者に、無手勝流に授業をやらせている。どっちが失礼なんだろう?

……さらに余談。初任者指導員が熟練しすぎたおじいちゃん先生ばかりなのも気になる。
初任者自身と、指導教員があまりにもかけ離れすぎてもモデルにはならないと思うし、その指導教員と相性が合わなかったら悲劇だ。だから、ジプシーのように、色々な先生について、授業や生徒との関わり方などのスタイルを盗むことがいいのではと思うのだ。

さて、「授業を見る目」を高めることの必要性、これは実習生に限った話だろうか? といいたいのだ。
実際に体験をして課題や気づきなどの課題意識を持ち、その上で、先輩の授業を見る。
そうやって「授業を見る目」を向上させていくことが、あまたある授業技術などを学ぶことと同じか、それ以上に必要なことなのではないかと思う。

たとえば、もし、私が授業の力量を伸ばす研修を受けられるとしたら、ある単元の授業を自分でやってみて、その後で、他の先生が同じ授業をしているのをじっくりと観察したいと思う。
そして、さまざまな先生が、この授業からどんなことを学んだかという「授業を見る目」を交流させるような研修をしてみたい。
きっとかなり多くのことを学ぶことができると思う。
そういう研修だったら、いくらでも喜んで参加したいと思う。
このような「授業を見る目」を強化するトレーニングを受けてみたい。