2016/03/01

教師が作ったカリキュラム、生徒が学んだカリキュラム〜「どの授業が良かった?」アンケート〜

国語科が他の教科と違うなと感じるのは、一つの指導事項、内容を教えるのに、ほとんど無数のアプローチがあるということだ。
たとえは、「俳句を読む」学習といっても、教師が練りに練った発問によって深めていくという方法もあるし、子どもたちの活動を通してねらいに迫っていくという方法もある。
ようは、指導事項、ねらいが達成すれば、どんなアプローチも「アリ」なのだ。
その授業内容(カリキュラム)を再考するときに、「教師はどう授業を作ったか」という視点と、「学習者はどうそのカリキュラムを学んでいたのか」という視点の、双方向からのふり返りが必要になってくる。
そのための一番お手軽は方法は、学習者に「この授業どうだった?」と聞いてみることだ。中学生目線で「やって良かった授業」「授業でついた力」についてのフィードバックをもらい、それをカリキュラム改善のデータとして蓄積していくのだ。

というわけで、受け持った生徒に、「二年間の授業で印象に残った学習ベスト3は? どんな言葉の力を高めたと実感している?」という調査を実施した。
生徒がどのような意識でこれまでの授業に取り組んでいたかフィードバックしてもらう。生徒によるカリキュラムの評価、教師の評価だ。
結果はどうなったか。ベストテンを選んでみた。(直前に学んだ「故郷」「バースデー・ガール」はあえて除外)リンクがあるものは、以前ブログに実践の概要をレポートしたもの。

2年生

3年生
・「テクノロジー」についての正反対の評論を読む(比べ読み)
・百人一首を現代版に書き換える学習(古文和歌)
・古文のテスト問題を自分たちで作る活動(古文読解)

となった。最も多かったのは帯単元。やはりその威力は絶大だ。
うれしかったのは、これ以外でも「よく覚えてたなあ」と思うようなマニアックな授業にも必ず票が入っていたこと。その生徒にとってはヒットした授業だったということなのか、全体として、得票のばらつきがとても大きかったのが特徴だ。
反省点としては、「授業内容」と「どんな言葉の力を高めたと思う?」と聞いたときの、後者の「言葉の力」についての押さえが弱く「しっかり読む力がついた!」というレベルの、具体性のない記述で終わっている生徒がいること。これはもちろん授業の構成上の反省点だ。言語活動のなかの「言葉の力」を具体的に意識し、自分の言葉でメタ認知できるようにしていくのが今後の課題。

カリキュラムは当然、学習指導事項に示されている教科、各領域の目標や指導事項、年間指導・評価計画によって教師が作っていくものである。しかし、それだけでは空回りしてしまうことも多々ある。学習者からのフィードバックも得て、それを蓄積していくことでよりよいカリキュラムを作り上げていくことができる。その当たり前の流れを作っていきたい。そして、学習者自身が「この学習は、この言葉の力を高めるために取り組んでいる」と言えるくらいまでの力と学習活動にしていきたい。
日本中の学校で「どの授業が良かった?」「どんな言葉の力を高めた?」アンケートを実施し、その結果が蓄積されて教科書などに反映されていく。それができるようになると、どえらいことになると思うんだけどなあ。全国学力・学習状況調査よりも先にやるのはそれでしょう。

2016/01/18

研究論文と実践報告の越えられない壁?

いわゆる「研究校」と標榜する学校でたまに話題になるのは、その実践をどのような形で表現、発信するかという問題だ。
例えばこんな会話がなされる。
「これは研究論文じゃなくて実践報告に過ぎない」、「研究論文というよりは、授業記録みたいなものなんですけどね」という言い方だ。
なんとなく、論文のほうが格が上で、実践記録、報告は下のようにも受け止められかねない。
では、現場にとって価値あるのはどちらなのか? 研究論文か、実践報告か?……と言っておきながら、本当はそんな問いは無意味なことは最初からわかっている。
いい研究論文がある、いい実践報告がある。ただそれだけだ。
でも、多分、大学のようなアカデミックなところでは「論文」が求められ、一方、学校現場の多くの学校の教師にとっては、他の学校の報告も、論文もあまり読まれない、相手にされていないのではないかという予感さえする。その差はなんなのか?
たぶん、一つには、大学のようにアカデミックな世界では「研究論文」という文体を通して知見を共有するシステムがあり、論文を書く業績がインセンティブとして働いているからにすぎないからではないか?
でも、現場の先生にとっては、論文を書こうが、いわんや他人のを読もうが読むまいが、ほとんどそれはインセンティブとして働かない。そもそも動機が生まれにくい。だから結果的に、さまざまな現場の実践の知見が共有されにくい。
私はそれを嘆いているわけではない、教員が大学の研究者のように振る舞い、アカデミックな作法に従わなければいけないとは思っていない。そうではなくて、なにかもっと、教員にとって、さまざまな実践を共有するための良い方法や、他の手立てがあるのではないかと感じているのだ。
いったい、学校以外での現場ではそれはどのようになされているのだろうか?
例えば、医療の現場では、大学病院のような研究の場での知見が、どのように臨床に韓流されるのだろうか。また臨床での知識がどう研究に生かされるのだろうか?
医療の現場以外で、たとえば福祉とか看護とかよく分からないけど、いわゆる研究と臨床が上手く回っているところはないのか?
もしうまくいっているところがあるとすれば、そういうところにヒントがあるのではと感じている。(というか、このままずるずる行けば、大学での中等教育の研究は壊滅的なものになるだろう? 文科省もあまり期待してないみたいだし)

2016/01/06

どの程度の内輪度かが、論文の丁寧さを決める。

今、あるレポートをまとめているところなんだけど、その読み手が、どの程度の「内輪度」があるか、いまいち測りきれないので書きあぐねている。
 
とある学会で、提案者と参加者のやり取りを聞いて、とても違和感を感じたことがある。
それはある現職院生さんの作文に関する提案だったんだけど、参加者(大学教員)は、提案の論拠をただすというよりは「この方法のほうがいいよ」などと具体的な授業のアドバイスをしていたのだ。まあ、提案した本人にとってはそれは役に立ったのかもしれないけど、こんな実習生に対するやり取りみたいのなら、校内研修とか研究サークルのような内輪な会ではやればよい。アカデミックな学会での研究発表に対するやり取りにはふさわしくない。(と、そう思いたい)
でもそういう研修会のような研究コミュニティが「学会」としてげんに存在していることは確かだ。結構あるあるネタなのかもしれない。

話は戻るが、やはり、レポートの読み手との内輪度が問題になる。
読み手が内輪な場合、細かい説明や論証をしなくても「そこのところはわかってくれるよね」である程度は通用してしまう。
しかし、読み手の専門分野が多様でかつオープンな場合、「わかってるよね」とこちらが甘く書いたところも、「わかりません」と言われちゃう。だから、なぜそう言えるのか、どんな事実を取り上げているのか、どんな方法、手続きを踏んでいるのか、そもそもそれを取り上げる意義や価値はという点まで、くだくだと書くことが求められることになる。
この読者に向けての距離感、説明の度合いがわからないと、どの程度まで丁寧に書けばいいか困惑してしまうのだ。

※余談だけど「内輪な」の対義語って何なんだろう。
「公的な」「パブリック」?
「オープンな」かな。
どうもしっくりこなかった。
どうもしっくりとこない。

冬休みの宿題

冬休みの宿題が続々と学校に到着。
初授業で歌会始をします。




2016/01/01

今年の実践&研究テーマ

なんとなく気分も高揚している今のうちに、意気込みのようなものを書いておきます。

次のキーワードで実践&研究を進めていきます

・「メディア情報リテラシー」に関する研究
情報の受け手、伝え手を育てるカリキュラム開発。
情報活用能力(ICT活用スキル、情報モラル等を含む)
学校図書館、webなどの多様な情報を活用した探究的学習のカリキュラムづくり(小・中・高司書と共同で行う)(※科研費申請中)

・レトリックに関する研究
身体感覚とメタファー、
語彙に着目した指導、ことわざ、慣用句などの慣用的表現の研究
言語活動を機能させる文体、話型などの分析、
身体表現によるコミュニケーションなど
情報デザイン力の育成(※科研費申請中)

・テキスト(教科書含む)に関する研究
表現を、既存のテキストを受容し、編集し、発信する過程と捉え、そのためのテキスト(学習材)のあり方を考える。
教科書のあり方(アナログ、デジタル)を模索する
生徒の学習意欲を換気するテキストの開発
著作権関連の条件整備と環境づくりに参画する
(↑「ICT CONNECT 21(みらいのまなび協創会議)」学習資源・データ利活用SWGで取り組む予定)

・きくこと、応答することに関する研究
ノンバーバルなきく能力
コミュニケーション、対話のやり取りのなかで発揮される能力
プレゼンテーション、説明などの多様なコミュニケーションのスタイル(文体)を分析する
談話分析、会話分析
(※国語教育実践理論研究会で取り組む予定)

・読書活動
図書委員会と協働で読書活動の推進
学校図書館の機能を活かした探求学習の支援
学校図書館の「場」の機能を活用した授業

・作文教育
大学教員と協働で実践交流&研究を行う。
(※科研費申請中)

・国語科の評価に関する研究
パフォーマンス評価、ポートフォリオ評価
形成的アセスメント
学力テストの改善
実践に役立つ、手軽にできる評価法の開発
(※校内研究と連動させて)

これらのキーワードにぴぴっときた方、是非一緒に実践&研究しましょう。
研究の相談、交流、情報提供等よろしくお願いします。

2015/12/24

こんな一年だった(2015年編)

今日で学校は仕事納め。今年の業務は終了した。
今年は「起承転結」でいうと「承」の一年。激動の去年と比べて、外面的には大きは変化はあまりない。しかし「転」につながる、いろいろなきっかけをつかむことのできた一年だったと思う。
まず校内では、今年は持ち上がりの学年だった。そのため、ほとんど変化なく、同様のペースで進めることができた。
私にとっての進歩は、かなり大胆に子供たちに任せて、そこから微妙に介入する勘所のようなものをつかむことができたということだ。これは生徒たちをある程度理解できたからこそのことだとは思う。
もう一つは。一つ一つの授業のユニットを小刻みに進めつつも、ユニット間の連続性をかなり意識して授業を作ることができたということだ。来年はこの連続性を意識して、さらに綿密にカリキュラムをデザインしていきたい。
三つ目は、ルーチンで取り組む活動の威力を実感できたことだ。来年度はどんな活動にするかまだ決めていないが、非常に効果は大きいので何かは取り組みたい。来年の生徒の姿を見てから決めようと思う。
研究面での進展は、以前よりもずっと子どもの姿にへばりついた研究ができるようになった点があげられる。具体的には、作文や談話分析などの手法を用いた研究になじみ、子どもの姿から虚心坦懐に課題を見つけ、学ぶことの面白さに気づいたことが大きい。
また、学校の研究に関連して、教科以外の総合的な学習などの授業づくりにハマり、その面白さに目覚めたのも大きな収穫だった。

対外的な活動としては、今年もいろいろなご縁でさまざまな活動に関わることができ、学ぶ機会を得ることができた。
今年取り組んだものとして、
学校図書館、読書活動に関する取り組み、
デジタル教科書、タブレット教材の開発、
アクティブ・ラーニングへの提案、
編集の授業開発(学会発表)
話す聞くの研究と研究大会での提案
著作権関係のシステムづくりの構築、
大学研究者とコラボで作文教育の実証研究、
教員への研修講師など。
このどれもが緒についたばかりだけど、来年、再来年にはその幾つかは大きく花咲くことだろう。それもとても楽しみだ、

今年は比較的に仕事に余裕があるので、積極的に外に出て勉強しに行きたいなと思っていたけど、さすがにそれほどできなかった。(会いたい人、行きたい学校、見たい授業はたくさんあったけど)しかし、少ない中でも、他の中学、高校で参観した授業はどらもお世辞抜きで素晴らしく、びんびん刺激を与えられるものばかりだった。また、会いたいなあと思っていた人ともたくさん出会えることができた。
と同時に、まだまだ自分の実践の中途半端なところを痛感させられることにもなった。今後もどんどん外から学んでいき、殻を破っていきたい。
と、来年の今ごろも同じような反省をきっと述べていることだろうと思う。けれども、積極的に前に出て攻める姿勢は忘れないでいこうと思う。まだアラフォーだし。

今年一年お世話になった全ての皆さんに感謝しつつ。良いお年を!

2015/11/27

ワークショップデザインの授業で中学生は何を学んだのか?

「ワークショップを作るワークショップ」の授業もワンサイクルが終了。
実践の紹介は過去の記事に。
2クラスが7時間で授業に取り組んだ後に、他の2クラスも同じ流れでワークショップ作りにチャレンジしていく。(今日からスタート)
最初にワークショップ作りに取り組んだ生徒たちに、授業後に「これから授業に取り組む二つのクラスにワークショップづくりのアドバイスをして!」と投げかけた。
授業を終えた生徒たちが、ワークショップデザインにおいて何が大切だと思っているのか、この記述からある見てとることができる。

〇課題設定のアドバイス

  • QOLを向上させるために必要なのは本当になんなのかをしっかり考えた上でテーマを決めた方がよい。
  • 「本当にこれでQOLが向上するの?」というのもあったから、実際の生活に役立ちそうな内容にするとよい。
  • どういうワークショップの活動にするのかというイメージをもつことから、ワークショップのテーマを考えていくのもよい。
  • ワークショップの考え方がまとまらないときは、アドバイザーの先生に聞くのが非常に効果的である。
  • ただ自分たちが知りたいことだけでなく、参加者は最も何を知りたいのか?何に興味があるのかを探ろう。
  • テーマはうけねらいではなくて、みんなの役に立ちそうなことにした方がいい。
  • ワークショップのタイトルで参加者をひきつけるべし。


〇プログラム内容のアドバイス

  • 最初にワークショップの内容を決めるときは、目的や方法等を明確にして、進めていくなかで方向性を見失わないようにする。
  • 「体験」と「説明」を上手くバランスをもたせて組み合わせるのがすごく大切。
  • 説明は根拠と主張がしっかりしていると聴き手も納得しやすい。科学的な根拠や参考文献を提示できるようにしておく。
  • どんな情報を言ったらみんなに興味を持ってもらえるか、こんなこと誰も知らないだろうみたいなことを言った方がパンチがあって良い。
  • 一つ強調したい部分を持つとお客さんのウケがよくなる。
  • 時間配分や順序をよく考える。(長すぎず、短すぎないように)
  • 時間が20分と短いので、その時間の中で簡単にできるテーマにするべき。短い時間で急ぎながら深いところについてのワークショップにすると少し中途半端になってしまうので、簡単なことについてじっくりよく考えたり体験する方が得るものは大きい。
  • 調理20分はかなり無理があった。少し時間がかかるようだったら途中まであらかじめ作っておくとよい。(片付けまで20分でやらなければいけないので、遅れると次のワークショップに行けなくなる)
  • ブースに分けて少人数でやるなどの会場レイアウトも工夫する。
  • 映像や音楽などで気分を高めるのも効果的。
  • 小道具などが必要な班は、分担を決めて、休み時間を使って計画的に準備しよう。(道具のリストを作っておく)
  • CD科の授業でとれる準備時間はとても短いので、自主的に準備をしていった方が良い。
  • 班員との情報共有を大切に。分担も公平にする。

 
〇ワークショップ本番では?

  • ワークショップと発表(プレゼン)との違いを意識する。どうしても一方通行になってしまって「参加型」にするのが難しかった。
  • まじめすぎず、ふざけすぎずにやるといいと思う。
  • パワーポイントに頼りすぎない。参加者とやる人の発言量が同じくらいが理想。
  • 参加者を巻き込んで一緒に楽しむ気持ちが大切!
  • 和やかな雰囲気にする。
  • 時間配分が思ったよりかかったので、一度実際の時間で通して練習してみるとよい。(調理系のワークショップは必ずリハーサルを!)
  • ワークショップをしている間は全く相談しなくてもできるようにしておく。もたつくと印象がすごく悪くなる。事前の準備が超重要。
  • 根拠となる資料を集めておいて、質問にちゃんと答えられるように。