2014/01/16

「とんでも」例文作成遊び~中学生の中学生による中学生のための古文単語学習~

高校入試を間近に控えた中学三年の授業。
目下の課題は60あまりある古文単語をおさらいしつつ、定着させることだ。
そこで、「とんでも」例文遊びに取り組んだ。

「とんでも」例文遊びの流れは次の通り。
1、あらかじめ、単語とその訳の一覧表を提示する。
2、覚えている言葉をチェックする。
3、覚えていない言葉のなかで古文単語を一つ選び、それを使った例文を考える。
(例文は現代文。普段使っているような言い回しでよい。例文の脇には現代語訳を書き添える)
4、例文カードを作り、全員の分を印刷して読み合う。

例文のポイントは、とにかく多少怪しくても、古文的にどうかな?というところがあっても許容し、古文単語の意味を受け止めて使っていたらよしとするところ。
例文も古文っぽくする必要はなく、むしろ、現代文の文脈で古文単語を使うほうが、かえって古文の意味が際立つのでよい。

こんな感じのカードができた。(写真をクリックすると拡大します)


  • 何気ない心配りがこころにくし
  • 君はどうせ人の話を聞かないのだから私の意見はいふかひなしだね。
  • 昨日の親との喧嘩はえもいはず、いと恐ろしかった~
  • 彼女はねんごろに部活に取り組んでいたため、人々は彼女を応援していた。
  • 受験の前に風邪を引いておぼつかなし
  • いたづらに頑張っても空回りするだけで意味がないと思う。
  • やがて、勉強に集中する。
  • 桜が二月に咲くのはありがたし
  • 引っ越しした部屋はとてもすさまじ
  • なかにはこんな大作を作ってきた生徒もいた。
  • テレビを見ながらの勉強はいたずらなり。この時期にそのような人がいるのはあやしと思う。あなたはいかがだろうか。受かるのはありがたしことで、ののしりたくなるがなほ勉強は大切である。
  • 受験生は遊べ
  • けがをしたら,手当てをしないとなかなか悪化してしまいますよ。
  • 一人でいるのはさうざうしい。
  • 彼は祖父を亡くしたようだ。とてもいとほしく思う。

やってみて案外すらすらできたので上々の手応えだった。
ただ、もうちょっとこうすれば,という課題もある。

  • 複数の古文単語を使った例文にして、もっとハードルをあげても良かった。
  • たとえば、問題形式にして、読み手が訳を考えて答えるなどのスタイルにすれば、例文つくりを書いたり読み合ったりする目的意識を持たせられただろう。
  • 一人一台タブレットを使えるような環境ならば、例文をアップロードし、同じ古文単語を使った例文を共有し合うなんてこともできるだろう。
  • 古文単語を使った日記など、文章の形式を指定してあげるのも。
  • 中三で慌ててやるのでなく、中一段階ではやめに古文単語を定着させる方法もありそう。(百人一首などをテキストに。)
  • 帯単元的な扱いで少しずつとりあげるのも。
  • 古語辞典をもっと活用させても良かった。(そういえば、最近では現代語から引ける古語辞典もあった!)
  • 古文単語に触れることをとおして、日本語の語彙を豊かにする指導として、他の語彙指導全体のバランスの中で関連してとりくませていけばさらに効果があるかも。
など。

なお、この授業のアイディアは、古文単語の定着指導に悩む私に対する、荷方先生、首藤先生の次のアドバイスから生まれたものです。
感謝すると共に、下記に記録しておきます。

荷方先生 現代表現に直した「文例集」とか予備校講師時代はよく使いました。「満員電車に乗りて,うたてしこととひとりごつ」→満員電車に乗ったんで,はあうぜー(気に入らない,嘆かわしい)って独り言を言っちゃったよ。 さすがに中学生にここまではやりませんが,最近の高校生の単語集(ex.萌単)なんかは,若い人に馴染んだ言い回しで文例を作ることが多いですね。
『萌える英単語もえたん』 最近はこんな英単語集まで!

首藤先生荷方さんが、ご提示くださっている方法をヒントに、「とんでも」例文作成遊び、というようなノリのほうが、私は好きです。あるいは、weblioなどを活用して、中学生のそれぞれの個々人の趣味や興味に合わせて、weblioの例文から、ターゲット以外の単語を他のいろいろな単語に入れ替えた例文を大量に作る遊び、なんてのも面白そうです。やってみると、これが、案外、ターゲットにした単語の定着率もよくなるはずです。

荷方先生お試しいただいたようで。もちろんこの用例集,先生が作るのがベストではなく,生徒が自分で作る方がベストです。その時の訳は上に示したように,「意味さえ合っていればどんなとんでもないものでも良し」です。 一応知識獲得と学習指導の研究者なので(笑),知識の生成活動はよく知られた通り学習に寄与します。特に,自己のために自己の知識を再構成する活動は,このような例文づくりや図表作成などあらゆる場面で利用できます。 自分のために知識を使いやすい状態にする「知識の利用可能性」を高めるカスタマイズ(知識の再構成・生成)を楽しく促進するため,首藤先生が指摘する「トンデモ」作成はとっても素敵な方法だと思います。

なるほどなるほど!
大学の先生のお墨付きのこの学習方法、これからも、このネタで子どもたちと遊んでみたいと思う。