2014/01/20

『情報大爆発 コミュニケーションデザインはどう変わるのか』メモ

ICT技術の進展により、情報量はとんでもない量に増大している。
社会は「情報爆発」と呼ばれる様相を呈している。

情報化社会は、我々の行動様式にどのような変化をもたらしているのだろうか?
そんなことについて語っているのがこの一冊だ。

内容は、情報化社会の行動様式というような、いかにも硬そうな内容だ.。それも、広告代理店のスタッフが書いた本だから、その業界に向けての内容も多い。縁遠そうな内容の話も多いけれども、たとえ話がとても具体的でイメージしやすいのと、脱線して話される「豆知識」的な小話がとても興味深く、最後まで一気に読み進めてしまった。
この本はプレゼン資料がもとになっている。そのため、プレゼンのスライド(上段)とそれについての説明(下段)がセットになって紙面が構成されている。ビジュアル的にも工夫されているので、おもしろい講演を聞いているような気になる。
以下に、気になったことを以下にメモする。実際はこんな専門用語ばっかり飛び交っているばかりではない。本を手にとって読んだほうが圧倒的にわかりやすい。
(しかし、後半は電通の広告戦略に関する話が中心になるので、広告の現場で述べられていることにあまり接点が感じられない人とっては興味が持てないかもしれない。)

以下備忘メモ(まとまっていなくてすいません)

1、情報爆発時代の情報の特徴
筆者は社会に流通する情報の変化を二点に整理している。
一つは、「情報化社会」から「情報過剰社会」に突入しているということ。
情報の流通量は消費量をはるかに追い越し、処理しきれないくらいに飽和している。

もう一つは、流通される情報は、メディアによってパッケージされた「硬い情報」であったものが、「やわらかい情報」(消費者によっていくらでも変形できるもの、未完成なもの、断片)になってきているということ。
飛び交っている情報は、パーツとしての自由に組み替え編集することができる状態になっているということ。
このように、情報の「過剰性」と情報の「可塑性」が大きな特徴となってきているという。

2、情報爆発時代の大きなニーズは「情報整理」
情報が過剰で、かつ可塑性に富むものであることから、、情報産業は「情報整理産業」へとシフトしていっている。
情報整理産業では、情報を一方的に発信するのではなく、さまざまな情報をまとめる「プラットフォームビジネス」としての機能を持つ。(たとえば、グーグルやアマゾン、YOUTUBEなどが典型的な例だ。)それは、自ら情報を生み出すのではなく、発信された情報を編集することを目的としている。

情報爆発時代の消費者は、あふれる情報の中から信頼するに足る情報にたどり着くためには、機械的な検索だけではどうしても限界がある。
そこで、情報についてよく知っている「人」を頼って、必要な情報を手に入れるようになる。(端的な例だと、ヤフー知恵袋とか、Amazonのレコメンド機能のような。)
そういう行動を「コラボレイティブ・フィルタリング」と呼ぶ。
情報過剰時代には、何が自分にとって役に立つ情報で、何が「ゴミ」なのかを分別してくれるフィルターが役に立つ。「コラボレイティブ・フィルタリング」は消費者同士が、お互いをフィルターとして利用して、役に立つ情報とそうでないものを区別しようという考え方に立っている。
このように、情報爆発時代では他の消費者に対する依存度が上がる。

3、情報爆発時代のボトルネックは[Attention(注意)」
いくら情報が増えても、人々がそれに注目できる時間は限られている。
情報過剰時代においては、Attention(注意)が希少になり、それを消費する膨大な情報源に対して、attentionを効率的に割り当てる必要が生じる。
このように、希少になってきたアテンション(時間コスト)をどのように配分するかというテーマに関心が集まってきており、それを「アテンション・エコノミー」と呼ばれている。
より多くの人に、より多くの時間、より効果的に情報に集中させることができるかどうかが、そこでは問題にされるようになる。

・ロングテール化する業界(例 Amazon)
ヘッドの方では「人気が人気を呼ぶ」という傾向(求心性)が働いている。
テールの部分では「私好みのアイテムを探し求める」という傾向(遠心性)が働いている。

プラットフォーム・ビジネス
「レーザーブレード型(自社取り込み)」と「カジノ型(マーケットプレース)」とがある。

3、過剰の経済学
過剰の時代は、「希少な資源を節約するのではなく、過剰なものをジャブジャブ浪費すること」が正しい経済戦略だ。(クリス・アンダーソン)
「過剰性を存分に活用する国民、企業、個人では、他のすべてのライバルを押さえてマーケットシェアを獲得する」(ジョージ・ギルダー)

「過剰の経済」では、何が過剰になっているかをいち早くみつけて、大胆に浪費することが大切。
同時に、新たに希少になってくるものは何かを予測することが重要になる。
「相対的な希少性」を察知する力が求められる。

4、ネットワークの歴史
ネットワークは、ツリー型(1対1)→スター型(1対多)→そしてメッシュ型(多対多)へと移行する。
情報は「偏在」するものでなく「遍在」するようになる。

分散型ネットワークの特徴(ポール・バラン) (インターネットの発想はこれ)
・すべての結節点(ノード)を平等に複数のルートでつなぐ
・中央機関を置かない
・デジタル信号を使う
・管理をしない

5、産業革命のパラダイム
マスメディアは、中心から末端への情報の配信コストを飛躍的に下げ、配信スピードを上げた。
その後、インターネットがもたらしたのは、末端からの情報配信コストの驚異的な低下と、スピードの加速。
インターネットがもたらしたのは、インタラクティブ・コミュニケーションではなく、マルチ・ディレクショナル(全方向型)なコミュニケーションであった。

既存メディアによる「乗合馬車」から、個人の乗り物へ。(アンバンドリング)

6、ネットワーク・ダイナミクスと広告戦略

ネットワーク化された「個」の挙動の特徴
(グレイグ・レイノルズの人工生命体の研究から)
・セパレーション(分離)仲間に近づきすぎたら離れる
・アラインメント(整列)仲間と同じ方向に同じ速度で飛ぶ
・コーヒージョン(凝集)仲間の中心方向に飛ぶ

・インターネットのコミュニティーの特性
特性1「スモール・ワールドネットワーク」(ダンカン・ワッツ)
小さいまとまりと、他のネットワークへの広がりを同時に持っている。

「六次の隔たり」・「弱い紐帯の絆」

インターネットの特性2「スケールフリー性」
二割のハブが八割のコネクティビティーを持つ
「ネット上の100人のうち、
1%が、コンテンツを自分で作っている。
10%が、それにコメントを書いたり、言及している。
89%は、mそれを見ているだけだ」(英新聞「ガーディアン・アンリミテッド)

「インフルエンサー・マーケティング」

・インターネットの掲示板
誰しもが受信者であり、発信者である。
そこではスレッドという「場」が主人公となる。
全体としては水の分子のように「流れる」という状況が発生する。

「インターネット環境は、情報の流れを受信と発信の関係でとらえるのではなく、探索と支援という関係で理解することも可能である」(『創発する社会』)

相互編集性
「発振→共振→増幅」

・広告の戦略
「ブロックバスター方式」(ハリウッド映画ような大型広告戦略)
「雪だるま方式」(ボトムアップ式に流行が生まれる)

・消費者行動モデルはAIDMAからAISASへ
A…attention(注意)
I…interest(興味)
D…desire(欲求)
M…memory(記憶)
A…action(行動)

A…attention(注意)
I…interest(興味)
S…search(検索)
A…action(行動)
S…share(共有)

AISASモデルは、企業と諸費者が互いにアクティブに関与し合っている。インタラクティブなモデルになっている。

・「フィルター」の共有
レコメンド・プレイリスト・タグ・リンク
フィルターを共有することで、消費者は時間コストである「アテンション」を節約することができる。
フィルターを共有することによって、思いがけない「フェイバリット」を発見することがある。
「フィルター・マーケティング」(フェイスブックなど)

・「アテンション・マーケティング」のキーワードは「キャッチ」
いかにして注目を引くかという要素が必要。
ノイズレベルを超える広告の大量投下など

・「ベネトレーション・マーケティング」(浸透させるマーケティング)のキーワードは「マッチ」
「パーソナライズ」「ローカライズ」「オケージョナライズ」
共感性(あなた目線・なかま目線・みんな目線)

BUZZは情報格差があるところに発生する。
消費者同士の間に情報格差があるところに発生する。
情報は「より深く知っている人」から「より浅い人」に伝わる。