2014/11/10

少人数学級ならいいなあと感じる一つの事例

なぜ少人数学級が良いのか?
その一番のメリットは何か?
間違いなく言えるのは、限られた時間内に、個別に指導ができる時間が増えることだ。
「全員」を相手にやりとりするのであれば、30人だろうと40人だろうと(ひょっとしたら50人でも)あまり変わらない。……し、それが学習効果として、さほど変わらないようにしてきたのが、発問ー挙手ー応答をはじめとする、一斉指導の授業技術であった。また、「学級」という集団への同調と共感を土台とした学級経営であった
しかし、その一斉指導中心の授業に、少しでも個別やグループへのアプローチをしようとするならば、5人の差がえらく大きく響いてくる。

一例を述べる。
40人クラスと30人クラスとを比較してみよう。
4人でグループをつくって活動する場合、40人クラスで10グループ、30人クラスで8グループとなる。
50分の授業時間でめいっぱいグループ活動をさせたとして、授業時間内に教師が各グループを巡回して指導できる時間はどれくらいあるか?
40人クラスで1グループにつき5分(300秒)
30人クラスで1グループあたり6分15秒(375秒)
その差、たった1分と思いきや、たった5分のグループ指導しかできなかったものが、1分も延びるというのは実に大きな差となるというのが分かるだろう。割合でいうと1.25倍のグループ指導の時間となる。これが一年間蓄積したら一体どれくらいの差が開くだろうか。
個別指導、グループ活動をさせるのであれば、クラスサイズは小さいにこしたことはない。(私は、44人学級から15人学級まで授業をした経験がある。その経験から、おそらく、50分授業ということを考えると、4人で6グループの、24人程度が理想なのだろう。そのサイズだとグループごとの指導もじっくりとできる。もちろん、個別への指導でも少ないにこしたことはない)

反対に、学級の人数を減らさずに全体で指導したほうが効果的という場合もある。
体育のゲームや音楽の合唱指導などはある程度の人数がそろわないとやはり寂しい。
さらに、学級での人数が減ると困るということさえある。……それは授業時数が増えると言うこと! 中高の先生にとってはクラスが増える=授業コマが増えて空き時間が減ることに直結する。これは死活問題だ。
つまり、いっぺんに教えた方が効率的で効果的である内容と、個別での指導がどうしても必要な内容(たとえば作文指導など)と、本当は教える内容によって人数も異なるのが理想なのだろう。
……ここでは授業に特化して説明しているが、学校生活は授業だけではない。学級の日常生活も、学校行事も、「個」に焦点を当てるか「集団」に焦点を当てるか、どこから見るかによってその「景色」はえらく異なってくる。
さらに、小学校の先生にとっては、ノート点検などの仕事も学級定員によって大きく仕事量に差が生まれてくる。こまめにそういう仕事をやっている人ほど、大人数のクラスでは苦慮するという事態になる。

学級の人数は何人が理想かという議論は、これからの学校教育ではどのような学習や学力を求めているのかという議論とセットでないと説得力を持たない。そしてその学力は、必ずしも従来の学力テストで測定できるような力とは限らない。「学力」はお勉強の力だけでなく、知徳体にわたる「生きる力」などの学力も含まれる。道徳や特活、学級活動や学校行事だって、養う力は「学力」でしょ。だから、その「学力」の全体像の検討抜きに学級定員を論じることはほとんど意味の無いことなのだ。(無い袖は振れないのが厳しいところだけど)