2015/05/18

実習生と文学的文章の教材研究をする

今日は放課後2人の実習生が来校し、来月から始まる実習の教材研究を一緒に行った。
取り上げる教材は「形」(菊池寛)と「風の唄」(あさのあつこ)の文学教材。
お互い下読みをしてきているので、雑感や印象を述べ合いつつ内容を確認していった。

一通り内容がつかめたあとで、この文章を授業として取り上げるための、素材研究の段階に入る。
大学生ならこれらの文章をなんとなくセンスで読めてしまっているんだけれども、それにはどのような方略を選択しているのか、それをあらためて言語化して取り出していく作業を行った。
その結果、上記二つの文章を読みときに、私たち三人は次のような方略を取り上げているということが明らかになった。
・場面の移り変わりに注意して読む。(回想シーンなど)
・登場人物の人間関係を押さえる。
・登場人物のキャラクター設定を考える(性格・能力・考えの傾向など)
・主人公と他の登場人物と対比してみる。
・カギとなる場面、クライマックスはどこになるか考える。
・印象的な場面や、キーワードとして頻出する言葉に着目する
・ものごとの因果関係でわかりにくいところを推測する。
・主人公の行動の動機をさぐる。
・視点(話者)をとらえる。視点の転換を考える。
・伏線とその回収の対応関係を考える。
・登場人物の心情の変化とそのきっかけに着目する。
・心情をつかむ(モノローグ・態度などから)
・言葉の持つイメージ、象徴性・暗示・隠喩の示すものを考える
・情景描写の効果について考える
・文体の特徴、印象について考える
たった二つの文章でも、実にこれだけ(もっとある?)の方略を使って、文学的文章を読み取ろうとしていることがわかる。
もちろん、授業では、これらの方略の全てをしらみつぶしに取り上げ、教える必要はない。それでは授業がくどすぎてしまう。
そうではなくて、この文章の、この「ツボ」を押すと、読みが一気に深まるようなポイントを考え、焦点化させることが必要だ。その「ツボ」につられて、他の方略も自然と引き出されていくような活動にしていこうということになった。
その「ツボ」がなんなのか、どういうアプローチをしていけばいいかを考えるのは、次回の打ち合わせで。それまでに、これらの方略を活用しながら読むことのできる言語活動を考えてくるように宿題としてもらった。
それにしても、ある程度文章が読めるようになった段階の学習者なら、このように読む方略を言語化して取り出すのは、シンプルなようでなかなか効果的な学習になるかもしれないと思った。(もっとも、それができないから苦労するのだけれども)