2015/07/10

「質問」考

「質問」のジャンル、表現様式はどうなっている?
思いつきだけど、「質問」とざっくりといっても、そのなかには様々なジャンル、言語様式が含まれていると感じる。
先生への「質問」と、友達と休み時間におしゃべりする「質問」とはなんとなく違う。目的、語彙、機能、口調など。
ヒーローインタビューの「質問」、謝罪会見の「質問」はちょっと違う。
カウンセラーの「質問」、コーチングでの「質問」も似て非なるものだ。
弁護士、政治家、セールスマンの「質問」は?
トーク番組の、黒柳徹子の「質問」と、阿川佐和子のそれ、さんまのそれとはかなり違う。
LINEの「質問」とYahoo!知恵袋のそれとは同じじゃない。
これら全て「質問」と一言でざっくりとくくってしまっていいのだろうか?
ひょっとしたら、「質問」ってかなり広大な言語世界が広がっているのではないだろうか?
それらを一望してみたら「質問」の世界について何かを知ることができるかもしれない。


質問の文法
質問は必ずしも疑問詞とか終助詞「か」がつくとは限らない。
「お前がやったんだろ?」「明日も来てくれるかな?」というような推測を投げかける質問や、
「これじゃないですよね?」という念押し、確認型の問いかけ(付加疑問文?)もある。
「え?」という問い返しの技もある。
「大丈夫?」というような語尾をあげて疑問にする表現もある。
要は、質問の機能とは、相手から情報を引き出したいのか、同意や共感を得たいのか、そもそもの相手の感情、欲望を察知したいのか、これらの意図の違いによって、文字だけ見れば似たような質問の表現でも、音声のニュアンスやイントネーションが異なってくるのだろう。
「質問」が「詰問」になったり「押し付け」や「依存」にもなったりする。(文法的定義はいい加減)


質問に見せかけた意見、詰問
よくあるのが、最初から意見、結論ははっきりしているのに、それを疑問文の形で投げかける「質問」だ。
「……でいいんですか?」
「……なんじゃないですか?」
「……と思いますが、そのてんはどうですか?」
こういう感じの質問は、たいてい自信たっぷりの強い語調で投げかけられる。
で、たいていの人は、意見を対立させるのが面倒なので
「……まあ、そうですね」とか「はい……」と言葉を濁す。
こういう詰問型のピンポンゲームのようなコミュニケーションを、サッカーのボール回しのような対話型コミュニケーションに変えていくためにはどうすればいいんだろうか?
「なんじゃないんですか?」という「問い」を相手のものとして押し付け、投げかけるのではなく、
「なんじゃないかと、わたしは思うんですが」と、自分自身の前提を自分に問いかける、または
「なんじゃないかと思いますが、どうでしょうねえ」と、問いを2人の対話の場で共有できればかなり風通しが良くなるかも。
それができないから、息苦しい詰問になってしまうのだ。


「話を振る」「水を向ける」という感覚
やはりトーク番組、インタビューの基本は「話を振る」という意識なんだろう。
インタビュイーが話しやすい状況になるように、切り口を提示する。
インタビュアーは、自分の興味関心ではなく、相手の文脈、心理、関心に寄り添って、その呼び水となるような問いかけを投げかける。
ハナっから「あなたにとってのサッカーはなんですか?」なんて質問は最悪だ。
「後半の追い上げはすごかったですね。あの点差で、ハーフタイムではチームでどんな話をしていたんですか?」のように、試合の一番のキモを、最も具体的なエピソードで存分に語ってもらう。
そういうような「話を振る」「水を向ける」という意識がまずあれば、質問者のスキルは格段に上がってくるだろう。