2015/05/14

アクティブラーニングな俳句学習〜「改悪例」で俳句鑑賞〜

以前から注目している詩歌鑑賞の手法で「改悪例を作る」というものがある。

「改悪例」の元ネタは、穂村弘さんに関連するブログで発見した

元の作品の魅力を台無しにしてしまうような「改悪例」を引き合いに出しつつ、それと比較してその作品の良さを表現する方法だ。
例えば、高浜虚子の名句
「春風や闘志いだきて丘に立つ」
だったら、
「春巻や豆腐いだきて丘に立つ」
といってみるように、あえて改悪例を引き合いに出して、元の句の良さを強調させていく。
ただでさえ取っつきにくい俳句の鑑賞学習を、「改悪例」というワンクッションを置くことで親しみやすいものになってくれるかもしれない。

ということで、早速授業をしてみた。
生徒には次のように四枚のスライドを紙で作ってもらう。

 1枚目
元の句を紹介。意味などを説明する。




2枚目
改悪例1
ちょっと言葉を変えてみる。


3枚目
改悪例2
やや大きく言葉を変えてみる。


4枚目
最後のこの俳句の「キモ」(魅力の中心)を説明。


 こんな感じで「改悪例」を作っていくことになる。
おおむね次のような思考の流れで作成していくことになる。
①俳句の意味、情景をつかむ。
②その俳句の「キモ」を探す。
③「キモ」を色々な言葉で言い換えて変化させてみる。
④③を元の俳句と比較して、どのように印象が変化したかを考える。

ポイントは次の二つ。
・言葉の変化をなるべく小さくして、意味の変化を大きくさせる。
・元の俳句の良さが際立つ「改悪例」になるようにする。

さっそくグループで夢中になって取り組んでいった。
4枚のスライドを作成したら、その場でiPadでパチリ。
教室のプロジェクターでそれを投影してグループごとに発表を行っていく。

完成した改悪例は次の通り 。
手書きスライドの順番は、
元の俳句の説明

改悪例1

改悪例2

この俳句の「キモ」
の順番です。


















































「改悪例」の作成は、俳句に苦手意識を持っている子ほど活躍できる楽しい活動となったようだ。
「改悪例」の活動の良さはいくつかあげられる。
・子どもは結構パロディーが好き。高い興味を示す。
・自然と俳句の「キモ」に近づいていき、元の作品や俳人のセンスに驚嘆できる。
・どんな子も活躍できる。どんな俳句も「改悪例」として許容できる。
・「よい」ことが「わるく」、「わるい」ことが「いい」と価値観が転倒している。(トランプゲーム「大富豪」の「革命」状態?)
・(本歌取りの効果)改悪として書き換えることで、優れた表現に馴染む。
・さらに、生徒が作った「改悪例」が必ずしも「悪く」なく、むしろ元の句よりも良くなる可能性に開かれている。元の句を越えてしまうこともあり得る。
などなど。

この学習の面白いのは、どんなに脱線しても最後はちゃんと俳句の「キモ」に迫ってくるということ。むしろ、無意識で「キモ」である表現を読み取れているからこそ、「改悪」で遊ぶことができるのだろう。そういう「キモ」に気づかせる手段として「改悪例」はなかなかの威力を発揮する。

俳句の表現の微妙なニュアンスをストレートに迫らせ、味わう学習を成立させるのは結構難しい。どうしても教師の解説中心で退屈な授業になる。俳句の鑑賞には取っつきづらいと思っている生徒が多いのは長年の悩みだった。
そんなときにふと思いついた「改悪例」の学習は、ちょっとしたゲーム感覚で、俳句の言葉の働きに気づくことができるなかなか使える学習活動になったと思う。