2013/08/05

文学作品の「続き話」を書くという学習活動について

小説などを読む学習の際に「続き話」を書くという活動がある。
この活動は、作品にマッチしていれば、生徒たちはとても意欲的に取り組むことができるので、私もたまに取り入れることがある。
しかし、いつでも何でも続き話というわけにはいかないだろう。
続き話を書く学習を取り上げる際に、注意しておきたいことを考えてみる。

1、言うまでもないが、「続き話」に適している作品とそうでない作品とがある。
文学作品の結末は、一般的にはオープンエンドとクローズドエンドというものがある。
オープンエンドの作品は、その後どのように展開するか分からないので、続き話を書く余地はある。
反対にクローズな結末の場合は、あえて続きを書くのは蛇足であり、作品の世界を損なってしまうおそれがある。クローズな結末の場合は、たとえば、続き話ではなくて、冒頭と結末だけ示して、間に書かれている隠された場面を予想させるという活動も考えられる。
また、これも変化形だけど、人物設定などの状況設定がわりとしっかりと書かれている作品は、後日談ではなく、プロローグを書いて、なぜそのような性格になったのかを考えさせるという活動もできるだろう。(たとえば「走れメロス」のメロスとセリヌンティウスの友情や、ディオニスのどす黒い性格が形成された経緯などを想像させる)

2、学習活動における「続き話」の位置づけの問題。
・なぜ続き話が必要なのか、目的意識は明確か(教師にも,学習者にも)
・書くことの指導がメインか、読むことがメインなのか(書くために読むのか、読むために書くのか)
・そのばあい、指導事項は何を重点的に高めるか
・どの程度原作を押さなければいけないか
・文量はどれくらいを求めているか
などの条件設定を教師が明確にし、それを学習者に示すことが必要だ。それが学習内容とつながってくる。

3、「続き話を書けること」=「作品が読めている」とは言えない。
続き話を書くためには、
・(内容)設定(時・場所・人物)やストーリーの理解
・(構造)視点や構造(プロット)の把握
・(形式)作者が選択した文体についての理解
などを押さえた上で、
・この先の展開について想像=創造
することが求めらる。
もちろん、作文を書くための語彙力や記述力などの文章表現力も必要だ。
「続き話を書くこと」には、これだけのハードルがある。
だから、続き話が書けていないからと言って、単純に読めていないとは言えない。
続き話を書くためにはどのような言語能力や意識が必要とされるのか、それぞれの教材文にあわせて前もって分析しておくことが必要だろう。

4、続き話を書くまえに考えておくべきこと
「原作から何を読み取り、どんなことを意識して書くか」ということと、「それらをどのように工夫して文章として表現するか」を区別して見ていく必要がある。
前者に傾倒すれば「読むこと」の指導に、後者に寄れば「書くこと」の指導に重点を置いた学習になってくる。

具体的に言えば、続き話を書く前に、次のようなワンクッションを入れて確認することはどうだろうか?
A、続き話を書くときの条件設定
B、続き話を書くときに、必ず押さえておかなければいけないことは何か?
C、続き話を書くときに、推測して書き加えなければいけないことは何か?
D、続き話を書くときに、自由に想像して書いてもよいところは何か?
このA~Dを全体で押さえた上で、それらを意識して創作させるのだ。
このA~Dをゼロから子どもたちに考えさせるか、それとも教師がある程度線引きをするかは、その授業によって変えていくことができるが、上記の要素を共通理解しておくことが続き話を書く学習の際には必要となってくることだと思う。