人間はコミュニケーションをするためにさまざまなシンボル(記号)を用いている。
言語(言葉、数字、マーク、絵文字など含む)はもちろん、絵画や音楽などのアート的表現、表情や身振りなど身体的なメッセージも用いられる。
言語と絵画的表現の中間にあるのが「図表」である。
地図や図解に用いられる「図」(マップ)、
座席表、時刻表などの表(チャート)、
そしてテストの成績などの変化を表す(グラフ)など。
このように、私たちは図や表に囲まれて毎日生活している。
図や表を読み解いたり表現したりする力は言うまでもなく重要な能力である。
悪いおともだちの中には、図表を自分に都合良く使って読み手を扇動しようという輩がいるかもしれない。(ダイエットの広告はほとんどこれだ!)
図や表を上手に使いこなせないから、相手に自分のメッセージを十分に届けることができないことがあるかも知れない。
図表を使って理解し、図表を的確に読み解き、効果的に表現する力は、言葉で上手に表現する力と同じくらい必須な力であることは間違いない。
さて、その図表を活用する力とはいったいどのような力であり、それを学校教育で学ぶ場合、どのようなカリキュラム構成が考えられるだろうか。
図表は、第三の言語ともいえるくらいにあらゆる知的活動に渡って利用されている。
言葉による表現はもとより、数学的な表現においても幅広く図表が活用されている。
カリキュラムを構成する場合、国語科、数学科という縦割りの教科構造では明確に区別できない部分はあるだろう。
だったら、むしろきっちり縦割りに考えるのではなく、ある程度はクロスオーバーさせて、相互に補完し合うようにカリキュラムを構成すれば良いのではないか。
話は変わるが、国語科に「鑑賞」という言語活動がある。
「鑑賞」とは、絵画や音楽などの芸術作品について、根拠を元に自分の感じたことを伝える言語活動だ。
この「鑑賞」は、言うまでもなく、美術や音楽でも学ぶべき内容となっている。
「鑑賞」する力は言葉の力だけでなく、美術的(音楽的)な力も必要とされるからだ。
だから、芸術作品を「鑑賞」するための学習で、美術(音楽)的なアプローチから攻める場合は、美術科や音楽科の出番となる。
一方、芸術作品から感じ取ったことを、自分の言葉で効果的に伝えるという言語能力に着眼した場合は国語科の出番となる。
「鑑賞」がこのように学ばれる場合、国語科と美術・音楽科は相互に補完し合うことが可能になる。
図表の活用も「鑑賞」の学習と同じロジックで取り上げることができるのではないだろうか。
自分の考えを伝えたり、考えを深めたりする手段として図表が用いられる場合は国語科で、それ以外の、教科の専門的な力を高めることをメインとして学ばれる場合はその教科で。
そのように発想して「図表の活用」の教科構造を次のように考えてみた。
そもそも図表とは?(定義)
・点・線・面で表現された図形
・記号、マーク、キーワードなどの言語(記号)的表現
・イラストなどの非言語的、絵画的表現
を組み合わせるなどして表現された可視化ツールの総称。
シンキングツール、ファシリテーショングラフィック、マインドマップ、フレームワーク、マンダラートなどの思考ツールとして、
棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフなどのグラフとして
座標軸やペンタゴンチャートなどのチャートとして
フローチャート、年表、時刻表などの表として
地図や模式図、構造図、解剖図などの図解として
※このへんのくくりはいい加減です。あまり気にしないでください。
などなど。
図表を活用する力とは?
A、【言語→図表】化 情報を整理して理解するために図表を活用する力
(たとえば)
・調べ学習などで得られた多様な情報を、図表を使って整理する。
・話し合いの内容を、図表を描きながら整理する。
・事物の構造、順序、位置、変化などを図解して理解しやすくする。
B、【図表→言語】化 図表を読み解いて情報を掴む力
・図表から分かる情報を読み取る
(いわゆる「非連続テキストの読解」PISA)
・図表を用いた筆者のメッセージ、意図を理解する
(メディアリテラシー的要素を含む)
C、【図表×言語】化 図表を活用しながら表現する力
・断片的な発想を、図表を使って表出する(マンダラート、マインドマップなど)
・伝えたいメッセージを図表を使って相手に伝える。
教科ごとの役割分担をどのように考えたら良いのだろうか?
・数学科
数学的なものの見方、考え方を表現・理解する手段として図表を活用することを学ぶ。
数量的な変化とか関数的な関係とか、集合関係とか。
(この辺、しろうとだから全然自信がありません)
・国語科
図表を用いた他者の意図や、その図表のメッセージを読み取ったり、
自分の考えを他者に主張するために図表を効果的に活用するすべを学ぶ。
たとえば、グラフをこういった形で活用できれば国語科の学習になってくるだろう。
統計データを活用した意見文を書く学習ゲーム
「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」のデータを用いて、正反対の主張を導く二つの意見文を書きなさい。
例
「日本人の若者はネガティブだ」
「日本人の若者はポジティブだ」の意見文。
「日本人は将来をしっかり考えている」←→「考えていない」
「日本人は外向きだ」←→「内向きだ」
「日本人は家族思い」←→「個人主義」
のように。
すべてのデータを用いる必要は無い。
意見に合わせて適宜データを選択し、組み合わせること。
ただし、最も多くのデータを使用して関連づけられた人をチャンピオンとする。
データは下記
・美術科
情報デザイン的な視点で、情報の伝わりやすさ、わかりやすさを感じ取って分析したり、効果的に表現するスキルを学ぶ。
・技術科
情報活用の実践力としての、様々な技術、ツールを使用して図表を効果的に活用する技術を学ぶ。(分析したり表現するためにコンピュータを利用するなど)
・理科・社会、そのほかの教科
教科内容を効果的に表現、理解するための手段として、図表の利活用を学ぶ。