2014/06/27

子どもたちが本を探せない原因〜「本を探し出す勘」を鍛える調べ学習のテーマとは?〜

実習生の授業で「発酵食品」についての調べ学習を進めている。
各グループで「食の世界遺産」と呼べる発酵食品を一つ選び、それを6枚のスライドで表現していく。
中学生たちが選んだ発酵食品は、
味噌・醤油・塩麹・日本酒・くさや・ピクルス・ナタデココ・メンマ・ヨーグルト・パン・チーズ・シュールストレミングなど。
これらの食品について①製法、②すごいところ、③みんなに伝えたいこと、についてプレゼンテーションをする。

資料はその場でiPadのカメラアプリで保存!
今日は早速図書室で必要な資料を探し出す活動を行った。
使えそうな資料はその場でiPadで写真をパチリ。出典も忘れないように奥付をパチリ。
調べ学習では、必要な情報は「情報カード」に書き留めておくのがセオリーだ。
しかし、今回は資料となる本がそれほど多くはないのと、一つの本(例『発酵食品のすべて』)で複数の食材(例 くさや 味噌など)が載せられている場合が多く、資料を使いたいグループがかぶる危険性があったので、長時間同じ本を閲覧することを避けたかった。そこで、iPadでページの写真を撮ったら、すぐにブックトラックに返すようにさせた。
以前だったら、情報カードに書いたり、コピーしたりしていたのだが、iPadの写真アプリの活用とても便利で、これからの情報活用行動を変えてしまうかもしれない。
(図書館的にはどうなのだろうか? 資料の複写については留意させなければいけないが)


本を探せない中学生
こうした活動をしてみて気づいたのは、中学生たちが意外に本を探せないということだ。
たとえば「塩麹」を調べているグループでは、料理系の本を一生懸命調べているのだが、なかなか資料が集まらない。実は「カビ」の本に「塩麹」が取り上げられていることには気がつかない。
「日本酒」や「味噌」について調べているグループは、それらの食材に関する情報が、料理の棚にあることは分かっても、自然科学の棚や、社会(地域の文化)の棚にあることには思いが至らない。
「ヨーグルト」を調べている班は、「ヨーグルト」という言葉が使われている本を探そうとしているが、それほど見つからない。しかし、「乳酸菌」をテーマにした本にいくらでも「ヨーグルト」が載っているのに本を手に取らない、それで「ない、ない」と困っているのだ。
これはなかなかゆゆしき自体だと感じた。
(実習生談、大学生でもこういう本を探し出すスキルがないらしい)

必要な本を嗅ぎつける「勘」とは?
本を探すのには、必要な本を嗅ぎつける「勘」というものが必要だ。
「この本には載っていそうだな」という当たりをつけて、目次や索引を確認し、ぱらぱらページを開いてみて情報を探す。
しかし、最近の調べ学習では、ほとんどインターネットのキーワード検索で情報にたどり着いてしまうので、このような「勘」を鍛えることはなかなかできないのかもしれない。

「勘」というと謎めいたワザのようなものをイメージしてしまうかもしれないが、もっと単純に言えば、関連するキーワードや領域をぱっと思い浮かべる力、こういう情報なら、こんな本として出版されていそうだ、こんな出版社ならこの系統の本を出していそう、などと予測できる力をいう。同一の筆者をたどってリサーチするのも一つの方法だ。
「本を探す」ということはこのように無数の探索行動の暗黙知が働いている。
「インターネットで情報にたどり着く」のとは、おそらく異質の力が働いていて(共通する部分は多いだろうが)、インターネットをいじっているだけでは、なかなか身につけることのできない力があるらしいということに気がついた。

「本を探し出す勘」を鍛える調べ学習のテーマとは?
ここから逆算すると、調べ学習に適したテーマは、「本を探し出す勘」を鍛えるものという条件が一つ考えられる。
今回の「発酵食品を一つ取り上げて調べる」というテーマは、「本を探し出す勘」を鍛えるためのテーマとして最適だった。

なぜなら、
・一つのテーマが様々な領域にまたがっていて探しにくい。
(調理の「家庭科」、食文化としての「地理、歴史」、そして発酵現象の「自然科学」)
・一つの食材だけを取り上げた本は少なく、書名に出にくい。
(別の書名のものから当たりをつけて探さなければならない)

こういうテーマを繰り返し取り上げてトレーニングすれば、かなり「本を探す勘」は鍛えられていくことだろう。
他にどんなテーマが考えられるだろうか?