こんな研究方法はおおっぴらにオススメするものではないけれども、一つの方法としてご紹介したい。それは「やぶれかぶれ型実践研究」である。
私みたいな、がさつで飽きっぽく、移り気な人間にとって、実際の授業は、結構その時々の思いつきで行われることが多い。
もちろん、年間で教えるべき内容は決まっている。
トレーニングのステップもあるていどは押さえられている。
しかし、実際に授業をする段になれば、そのときどきで新しいことに取り組んでみたいという欲求が出てきたり、新たな課題が生まれたり、生徒の実態を見て変えていくことが余儀なくされるケースがほとんどだ。
だから、計画は計画として持っておきながら、授業内容は、時々の状況に応じて、かなりの幅や柔軟性を持たせて実践しているというのが実際のところだ。
そのへんが、他の教科にはあまりない、らせん状のカリキュラムとしての国語科のメリットでもあると思っている。
さて、「やぶれかぶれ型実践研究」である。
これは表現はあまりよろしくないが、実戦的な研究方法でもある。
それは、
1、研究仮設や研究計画などを立てずに
2,とりあえず実践してきたものをリストアップし
3,そのよかったところやまずかったところを分析し
4、いくつかの授業づくりの視点を提示する
(授業づくりの視点とは、たとえば、書くことの授業で大切にしていることとか、重点を置くポイント、陥りがちなミスなど、実際の授業づくりで活用できるコツやポイント、姿勢や心構えなどの指針も含む)
という方法である。
いわば、帰納的な方法で実践をふりかえり、それをまとめていく研究方法だ。
もっとも、こんなものを研究と名乗るだけおこがましいような気がするけれども、事前の準備がいらないので誰でも気軽に取り組めるメリットがある。それでいて上手く視点としてまとめることができれば、自分のためにもなる、お得な方法でもある。
計画性もなく、いい加減に取り組んだ実践なんかまとめられるのか?と思うかもしれないけど、「いいかげん」というところが実はキモだったりもする。
というのは、「いいかげん」に、無意識に集められ、まとめられた複数の実践群には、無意識のこだわりなり、課題意識が必ずどこかに共通してあるものなのだ。
複数の実践をとにかく並べてみる。そうすると「なにか」が浮かび上がってくる。それが、なかなかに面白い発見があったりするものなのだ。
実践内容をカードに書き出してもいいし、ワープロなどの文章に起こしてもいい。
リストアップしてそれをじっと眺めるだけで、両者の関係性が浮かび上がって見えてくる。
その成果や課題、反省点や到達点をくくりだし、次のステップにつなげていく。
それを続けていくことが自分の実践の糧になっていく。
カリスマ教師でない限り、平凡な教師ができる実践なんてたかが知れている。やれることも相当に偏りがあるのが実際のところだ。私の実践には、こだわり、思い、限界、そういうもろもろが絡み合って一つの授業が構成されている。「やぶれかぶれ型実践研究」では、その無意識の限界やこだわりをこそ大切にし、抽出することを目的にしている。
この研究は誰のためでもない、私自身の向上にとって必要な研究方法である。