2013/07/16

授業実践 批評入門「ドラえもん短歌」を批評しよう(中3)


批評入門「ドラえもん短歌」を批評しよう(中3)

1時間目
①「ドラえもん短歌」をいくつか紹介。
 →→ 一見子どもっぽい短歌だけど、大人の目線で読み込むと深くよめる。
②教科書「それはトンボの頭だった」を範読。
③解説・感想・批評の違いを考える。
 解説……内容をわかりやすく説明する。
 感想……自分の感じたことを表現する。
 批評……対象を評価する。作品から自分の考えを述べる。
④「それはトンボの頭だった」の批評の表現の特徴を指摘する。
 ・内容……短歌への評価・最後に作品から発展して自分の考えを主張している
 ・形式……突っ込み・語りかけ・疑問点から解釈、そして自分の考えへと自問自答している。

2時間目
①批評のモデル文を読む。
②ドラえもん短歌のなかで教師が選んだ作品一八首を読み、そのなかから批評したい作品を選ぶ。
③作品を分析・解釈する。
 短歌の解説・この短歌の心ひかれた点・短歌への問い・問いに対する自分の答えの、四項目についてワークシートに記入する。
 →「心ひかれた点」が、西尾実の言う「直観」にあたり、そこから「自問自答」の解釈に引き込み、そして「判断・評価」の批評として表現させる。
④同じ短歌を選んだ人同士で集まり、解釈を交流する。
⑤批評文を書く。
 この批評文には、②で整理した内容と、③で交流した内容をまとめるとできあがる仕組み。

生徒の批評文は次のようなものができあがった。


 「ドラえもんが好きだと言える人だった 羨ましくてにくらしかった」

 この短歌は、「ドラえもんが好き」と言える人に対しての作者の気持ちをうたった短歌である。
 わたしは「羨ましいのににくらしい」という気持ちにとくに心ひかれた。
 ではなぜ羨ましくてにくらしかったのだろう。多分ドラえもんというのを「夢」にたとえているのだろう。大人になると、子どものときと同じように夢が見れなくなり、現実ばかり見てしまう。その中で「ドラえもんが好き」と言える人はやはり羨ましくてにくらしいのだ。私は大人になっても夢を持ち続けるのは大変だと思った。


『またドアが壊れちゃって』と言い訳する日々なのか僕の未来は」

 この短歌は、「今の自分から変わりたい」という意志をうたった短歌である。
 「  」を使った自分の口癖に対する悔しさや悲しさを表しているのだが、そこに「未来の自分」を考える作者の希望も垣間見えている点に心ひかれた。
 この作者はどんな人で、誰に対する言葉だったのだろう。
 私は、いつも遅刻ばかりしている少年が、友だちに対して言う言葉なのではないかと思う。でも、そんな自分がくやしい。そんなどうでもよいことで、信頼を失いたくない、自分の人生をムダにしたくない、という気持ちがあるのだろう。
 作者はこの少年を通して、読者に「今の自分」を見つめ直す機会を与えているのではないか。