2013/07/31

国語教科書をカスタマイズ!

国語の学習において、なんと言っても大きなウェイトをしめるのは教材です。
教材の善し悪しで授業のほとんどが決まってしまうと言っても過言ではありません。

国語の教材=教科書、と考えがちですが、教科書教材を深く理解しつつも、それ以上の教材や学習活動がある場合は遠慮なくカスタマイズ(最適化)させるべきだと思っています。
そんなカスタマイズをするための方法をご紹介します。


教科書をカスタマイズして使うために
○まずは教科書を深く理解する。
A、初級編
ステップ1 まず、教科書を隅から隅まで読む。
表紙から、表紙の裏から、目次から何から何まで、とにかく隅々を読む。
とくに凡例(「この教科書を使うに当たって」など)や、教科書選定用のパンフレット、ホームページなどを熟読し、編集方針や、教科書内で用いられている記号や表記などを的確に理解する。

ステップ2 教材を隅から隅まで読む。
教材文だけでなく、脚注や挿絵などもしっかりと読み込む。
後半のコラムや解説記事もよく読み込む。そうすると、教科書の色々な部分を関連づけて指導できることがわかる。
※過去の同一教材のものと比較すると、違いや特色がとてもよくわかります。

ステップ3 教科書を準拠しているワークブックなども参考にする
教科書準拠のワークや問題集にも目を通しておくと良い。
どのようなところを問題にしているか、学習のポイントが端的にまとめられていることも多い。
年度初めならば、いろいろな業者のワークがサンプルで届いていると思うので、これらに目を通しておくと結構参考になることもある。

B、上級者編(時間がなかったらスキップしても可)
ステップ4 他社の教科書と比較する
同一の指導事項や、同一の文学作品などが、他の教科書でどのように扱われているかをしることはとても有効。色々な授業のヒントが満載だ。
教科書会社の違いによって、微妙に編集方針や授業のもっていき方が異なっている。それらの違いからさまざまなことを学ぶことができる。

ステップ5 他の校種の教科書を読む
小学校や高等学校の教科書を読むこともとても参考になる。
小学校でされていることが必ずしもレベルが低いといいわけではない。反対に、高校でやっている内容が中学校でも十分に実戦可能なものも多い。

○教科書を理解した上で、カスタマイズ
教科書は、指導書や学習の手引き通りに使えれば、もちろんそれにこしたことはない。
しかし、それだけでは何か物足りなさを感じることはある。
・教科書の内容が魅力的でない。わかりずらい
・教える生徒たちのレベルと合わない
・なんとなく好きでない
・教える内容(指導事項)と教材がマッチしていないような気がする

などなど、全国の中学生の平均を想定して作られた教材が、自分の学校の生徒と合わないことがあるのは、当然のことなのではないかとさえ思う。
そんな場合は、生徒に合わせてカスタマイズ(最適化)することが必要だ。

国語の授業は、ざっくりと言えば次の要素の「かけ算」で表される。

○学ばせたい内容(指導事項)
   ×
○教材(テキスト)
   ×
○学習活動(言語活動)
   ×
▲生徒の実態や教師の指導技術

これらのうち、いうまでもなく▲生徒の実態や教師の指導技術は、入れ替えは不可能だ。
だから、入れ替え可能な指導事項やテキスト、言語活動を組み替えていけばいいのだ。

○教材(テキスト)をカスタマイズする
たとえば、次のような作品に差し替えるのことができそうだ。
 ・下学年や小学校のときに習った文章
・身近な新聞や雑誌の記事
・生徒に人気の小説や本の一節
・教科書には取り上げられていないが、生徒に読ませたい古文
著作権に配慮が必要。

学習活動(言語活動)をカスタマイズする
・言語活動を組み替える
学習指導要領には「言語活動例」が例示されているが、「例示」であるから、必ずしもそれにとらわれる必要はない。とりあえず、言語活動で何をしたらいいかわからない人は、他の学年や、他の校種で例示されている言語活動を取り上げることも可能だ。(そういう使い方はできる)

・領域を組み替える
たとえば、「読む」→「書く」は最も自然に組み替えが可能だ。
読むことの教材を、書き換えなどを通して、書くことの学習として発展的に取り上げる。
教科書の説明文をモデルとして、説明文を書く学習につなげる。
また、「読む」→「話す聞く」へと変えることもできる。
クイズやアニマシオン、ディベートなどに取り組み、「話す聞く」の学習として組み替える。

○指導事項(学ばせたい内容)をカスタマイズする。
たとえば、「読むこと」の場合は、その「文章の魅力」がどこにあるかによって、指導する重点を柔軟に変えることが重要だ。
(教科書は編集上の都合で、その教材に必ずしも適切とは言いがたい指導事項があてがわれていることがよくある。だから、指導書や教科書に指導事項が割り当てられているからといって、それに必ずしもとらわれる必要はない)
作品の魅力を捉える視点の例
・(文学・説明)言葉の表現が工夫されている
・(文学)登場人物のキャラが立っている
・(文学)時間や空間の構成が効果的だ
・(説明)具体例(事実)と意見の取り上げ方がユニーク
・(説明)段落構成や展開がしっかりとしている
・(説明)筆者の意見が明確に主張され、それがありきたりでない
・(文学・説明)取り上げられているテーマが魅力的
などなど。

一番大切なのは、子どもを引きつける「作品の魅力」はどこにあるかを、目利きである教師がしっかりと捉えるということだ。
教材の「一番の」魅力とか、文章の「一番の」特徴をつかんだ上で、それを上手に生かす授業を構想したい。
内容的な魅力はもとより、言葉の力を高める学習材としての価値を、指導事項との関連を考えて的確に捉え、それを上手に子どもたちに橋渡しをしていくことが大切だ。