2014/09/10

説明文を図解する学習で、何を考え、どう表現しているのか〜情報デザインとしての説明文図解学習〜

実習生の授業。「オオカミを見る目」という説明文を、八つ切り画用紙一枚にまとめるという学習を行っていた。(私が指導している実習生ではないので、詳細は分からないが、)前段階で内容の要約文などをまとめて要旨をつかんだ上で、用紙一枚にビジュアル的に表現するということだろう。(一応しゃれではない)

説明文の説明内容を一枚にまとめるときに、生徒たちは何を考え、どう表現していくのだろうか。学習に取り組む姿を観察しながら、それを考えていた。
説明内容を用紙一枚に表現する際には、次の点の吟味・検討が必要になるようだ。

図解で吟味・検討する要素
  • 用紙を縦に使うか、横に使うか
  • 縦書きにするか、横書きにするか
  • 用紙一枚に収まる情報量(文字量など)はどうするか
  • 余白をどの程度とるか
  • 中心、左右、上下に何を配置するか
  • どのような順序で記事を配置するか
  • 囲み記事などの大きさや形は
  • 全体の色味やトーン、枠組みの決定
  • テキストの段組は
  • 文字や線の大きさ、色、フォントは
  • 手書きで仕上げる場合は、筆記具の選択(マジックか、ボールペンか、クレヨンかなど)
  • 写真やイラストを、何をどの程度使用するか
  • 説明する言葉の表現(そのまま使うか、言い直して表現するかなど)
  • キャッチコピーや見出しをどうするか
  • 矢印や記号、図や表をどの程度使用するか
など、細かく要素をあげていけばいくらでも抽出できる。
これだけのことを教えなければいけないのか!と思ってしまうかもしれないが、そんなことはない。そんなことを教えなくても、子どもたちは、日常的に触れているポスターや新聞、ウェブなどの図解表現から、これらの要素を何となく理解し、表現できてしまっているのだ。
何にも教えられていなくても、経験的に、何となく、文字や線の色分けを工夫したり、タイトルの形を工夫したりしている。

情報デザインとしての説明文図解学習
肝心なのは、これらの要素を学習活動として取り上げる際には「何となく」各自のセンスに任されるのではなく、「これを伝えたいから、このように(レイアウトなどを)工夫して表現した」という「こだわり」を持たせるところではないかと思う。
そのような「こだわり」と、実際に表現されたものとの関連を吟味・検討することがなければ、何でもありになってしまうし、各自のセンス任せになってしまう。つまりは学習にはならない。
メッセージを効果的に相手に伝えるために図解で表現をするという「情報デザイン」の視点をこれらの学習に持たせることが必要である。
ここであえて「デザイン」という言葉をつかうのもゆえあることである。「何となく」「センスで」できてしまう表現、ありのままに、おもうがままに表現したいのであれば、それは自己表現としての「アート」である。
「アート」には「アート」としての価値はもちろんあるだろう、しかし、相手にメッセージを効果的に伝える表現を志向する場合は、その表現は自ずと「デザイン」へと向かう。ここで学ぶべきは「デザイン」としての図解表現である。(繰り返すが「アート」としての表現を否定しているわけではないし、「デザイン」の基盤にも「アート」的なセンスは必要となるだろう)

説明文を図解する学習の取り立て指導
そうはいっても、一つ一つ、これらの要素を、表現の細部まで取り上げて指導をしていたら日が暮れてしまう。
まず、教師がどんな図解表現をさせたいのかというねらいの明確化と、そのねらいを達成するためには、生徒たちにどのような力が不足しているかという実態の把握が必要だ。
それらの実態把握をしたうえで、たとえば、図解の要素のうち、特にポイントとなる点を焦点化して指導してみたらどうだろうか。(「要素を分解し、要素の力点をずらす」手法を活用する) ポイントとなる点に意図的に生徒の思考が向くように、要素をずらしたり、要素を考えさせたりする授業をデザインするのだ。

1、レイアウトの力を付けたいときには
画用紙一面の「面」として訴求力を持たせる表現をさせたいとする。
そのときは、次のようなレイアウトを検討する学習が有効だ。
一つの説明文を一枚の紙に表現するとして、どのようなレイアウトが考えられるか、グループでその文章を図解表現するレイアウトのパターンをたくさん(五つ以上?)出していく。そして、それぞれの図解表現の良さを考える。
たとえば、二項対立の文章内容であれば、シンメトリーの構成か、マトリックスのような表にまとめるという方法がある。時系列などの流れが表現された文章内容であれば、年表とかチャートのような流れを可視化するレイアウトが考えられる。
これらの文章内容に応じたレイアウトのパターンをグループで複数出し合い、それらのレイアウトの良さを話し合う。
ゼロからパターンを考え出すことが難しい場合は、教師がいくつかパターンを例示して、それらを比較するという方法もあるだろう。

2、見出しの効果を学びたいときには
何となく見出しの言葉を付けていて、インパクトや工夫のない表現が見られたとする。
そのときは、次のような活動はどうだろうか?
新聞やポスターなどの見出し部分を空欄にし、その中に入る言葉をグループで出し合い、考えていく。
見出しの言葉は、文章内容を凝縮する要約の機能をもっていたり、キャッチコピーのように読み手を惹きつける効果を持った言葉が選択されることが通例だ。そのような見出しの言葉の効果を意識させるための活動である。

3、説明する文章の表現を学ぶときには
説明文を図解する文章のなかで説明する文章を書くときに、単なる引き写しだったり工夫が見られないときに取り上げる学習。
説明文を、様々なモードで書き換え、表現の効果を考えていく。
説明文は、説明を伝える相手によって、説明する表現は変化をしていく。
説明内容になじみがなかったり、初めて聞く人に対しては、その前提や趣旨などを含めて丁寧に説明する必要がある。
反対に、説明内容をある程度知っている人に向けては、新たな切り口や、より深い視点を提示する必要がある。
このように、説明内容は、相手との相互作用の中で生み出されていくものであるから、どのような相手に、何を伝えたいかという意識を明確にもたせることが重要だ。
小学生向き、中学生向き、大人向きなどの相手や、伝える目的を提示し、書き換える学習を行うことで、説明する文章がどのように成り立っているか学ぶことができる。