2014/09/08

文学作品の王道パターンを学ぶ~「夏の葬列」の授業№2

「夏の葬列」の授業の2回目。
授業の基本的なコンセプトは、小説を書き方をつかむために読む、である。
今日は作品全体を俯瞰して構成をとらえる学習を行った。

1、「箱書き」を書く
箱書きとは、小説作品のプロットを流れに沿って書き出すものである。
小説を創作する際には、設計図のような箱書きを書いてから、原稿を書き始めることがあるという。

「小説を書くための基礎メソッド」の方法を参考に、次の観点でまとめていく。

①時間
②場所
③人物
④出来事

たとえば、シーン1(大段落の1つめ)は以下の内容になる。

シーン1
①時間:現代
②場所:海岸の小さな町の駅→アーケード→踏切→芋畑
③人物:彼・葬列の人
④出来事:出張帰りに、かつて疎開した町を再訪した。
葬列を見かけ、昔の出来事を思い出す。
このシーン1を学級全体で取り組んだ後で、4人グループになり、残りの4つの場面を整理していった。

◆活動をしてみて
最初は15分くらいでできるかなと甘く見ていたが、予想以上に時間がかかった。
結局、倍の30分くらいかかってようやく7~8割の生徒ができるという結果になった。
どうやら、場面の出来事を2~3行くらいで短い言葉でまとめることに苦心していたようだ。
要約文と考えると、どうしても思い切ってそぎ落とすという感覚にはなれない。
あれこれと盛り込んでいくうちに、5行、10行と記述が増えていってしまう傾向がみられた。
この箱書きの場合は、内容を削ってまとめるというよりも、内容の趣旨を短く言い換えるというタイプの要約になる。そのため、適切に要旨を理解していないと、一言で言い換えることはなかなか難しい。ましてや、一度しか読んだことのない文章であったから、生徒にとっては難易度の高い学習だったのだろう。
あるいは、たとえば「○○○が………する」のようなフォーマットを示した方が取り組みやすかったかもしれない。

箱書きが書けた生徒のトートを、iPadで撮影、スクリーンに写しつつ全体で共有していった。

2、文学作品の王道パターンについて知る
内容のあらましを整理した後に、効果的に文学作品を表現している技法としての3つのポイントについて説明をした。

○王道の展開パターン
 物語は「冒頭」「発端」「山場」「頂点(クライマックス)」「結末」という「起承転結」の王道パターンがある。
 中盤よりもやや後半部分に(水戸黄門で言えば45分に??)クライマックスが訪れる構成が、読み手にとって一番気持ちがいい。
 またクライマックスでは主人公に一番大きな変化が訪れるという特徴もある、
 夏の葬列のクライマックスは、葬列がヒロ子さんのお母さんのものだったと知って現実に直面させられる、場面4の最後の部分である。

○ストーリーとプロットの違い
 ストーリーは、出来事を時間順に並べたもの
 プロットは、物語を語られた順に出来事を再構成したもの
 (プロットには作者の意図が含まれるので、時系列がゆがんでいる作品はその意図や効果を考えることが必要となる。)

○ミステリー(謎)によく見られる、「Aは、実は、B」という構造
 「夏の葬列」だと
 平凡なサラリーマンである彼だが、実は、子ども時代にヒロ子さんを死なせているという暗い過去を持っている。
 ヒロ子さんのお葬式だと思っていたが、実は、ヒロ子さんのお母さんの葬式だった。
 ほかにももっとたくさんあるだろう。

 実は……のパターンは、キャラクター設定などでも活用されている汎用性の高いパターンでもある。
 クライマックスには「実は……」の部分があらわになり、ミステリー(謎)が解決するというパターンがとても多い。

 これらの、「文学作品の王道パターン」をある程度念頭に置いて。小説を味わったり創作させていくとより効果的に学習を進めていくことができると考える。

全般的に今日の授業は内容を詰め込みすぎ、やや後半の解説がしゃべりすぎの学習になってしまった。しっかり学んでほしいことが定着できているか、やや不安だ。