2015/06/01

「協働」の機能を問い直す

前任校では教科学習の中で「交流」について研究を進めていた。
そのときに真っ先に取り組んだのが
「『交流』ってざっくりといっても、そのなかで一体何が起きている?」という問いを追求したことだった。つまり、学習場面における「交流の機能」を分析したのだ。
その結果、参考文献も見ていく中で、「交流」にはつぎのような機能に整理することができた。以前書いたブログにやや詳しく載っている。
・共感的交流(お互いの良さを認め合う)
・累積的交流(情報をたくさん集め、豊かにしていく)
・連鎖的交流(コンセプトマップや連想ゲームのように、話題が連鎖的に広がっていく)
・探索的交流(一つの解に向けて意見を収束していく、まとめていく)
・批判的交流(出された意見をクリティカルに精査、吟味していく)

もちろん、実際の交流場面ではこのように上手く現象が分けられるというものでもない。しかし、一度こういう分析をしてみたことで、なんとなく交流をさせるのではなく、交流のどのパターンを重視して設定すべきかという方向付けが、教師の意識の中でよりはっきりとしたという効果はあった。なにより、交流をしている子どもたちをみとる判断材料に活用できた。これは自分にとっても意義ある研究だった。

さて、現在の学校で取り組んでいる研究課題は「協働的な課題解決」だ。
この「協働的」というのもなかなかくせもので、何となくグループで取り組ませているだけで「協働」と言えてしまうこともなきにしもあらずだ。
だから、グループでやる意味ってあるの???と思ってしまうようなユルい協働的な課題解決にどうしても陥りがちな現状がある。
そこで「協働」のパターンや機能を、交流の研究で行ったように整理してみたらどうなるのだろうか。
雑ぱくな思いつきだけれども、次のように考えてみた。

メンバー構成のパターン
Ⅰ 構成的グループ編成……教師がグループ分けを決定する
 A 同質グループ……同じ能力や特性にそろえたグループ(習熟度、男女別など
 B 異質グループ……異なる能力が混在するグループ(男女混合など
 C ジグソーグループ……同質グループを途中で組み替える編成
 D 役割分けグループ……グループ内に異なる役割を与えられたメンバーが存在している
 E ランダムグループ……A〜Dのようにとくにメンバー構成を意図しないグループ
Ⅱ 非構成的グループ
 F 自由グループ……生徒〈学習者)が自由にグループを組む
 G フリー編成………グループを作ることも作らないのも自由。

課題解決のパターン
! 交流パターン
衆知を集めて、集団で解を導き出していくパターン。
次のようなプロセスをたどることが多い。
 A アイディア(考え)を出す(ブレーンストーミング)
 B アイディアを整理する(束ねる、分類、構造化する)
 C アイディアを吟味する(批判検討したり、抽出、焦点化したり、選択したり)
 D アイディアを試行する
 E アイディアの試行について振り返る
話し合い活動などはこのパターンをとることが多い。ディベートもこのパターンのバリエーションとして位置づけることができる?

Ⅱ 一緒に取り組む(共同)パターン
同じ課題を一緒に取り組んでいく。
お互いの姿を参照しながら、相互啓発的に学びを豊かにしていく。
随時、感想や意見交流が活発に行われていく。
(「共同学習」『学びの共同体』でよく見られる?)

Ⅲ アドバイスパターン
それぞれが課題に取り組んでいく中で、他の人に質問し、教え合ったりする活動が行われていく。(縦割り活動や『学び合い』の学習に多い? 部活動もこれに近い)

Ⅳ コラボレーション(協働)パターン
それぞれが異なった役割を担い、チームで課題を解決していく。
制作表現系のプロジェクト単元に多い?
例)新聞作り
編集長、記者、カメラマン、校閲、デザイナーなどの役割を決めて取り組んでいく。 

もちろん、これらのパターンは重なり合うことも多いし、これ以外にも、もう少し考えれば新たなパターンを抽出することができるかもしれない。

このように「協働」とひとことで言っても、そのなかには様々なパターンが内包されている。個々人によって「協働」のイメージがかなり異なることが考えられる。だから、一度このように協働の類型を整理し、授業で取り組みたい「協働的な課題解決」がどのパターンに近いのか当てはめてみることも有効ではないかと考える。
って、そういう研究ってどこかでやられているはずだとは思うんだけど……勉強不足なだけ?