2013/08/25

タブレット端末を使った授業、現場の声~便利すぎるのも考えものだ~

これからの学校教育でICTを活用した授業がだんだんと進められていくことだろう。
従来の、教科書、ノート、そして黒板だけにとどまらず、電子黒板や、電子教科書や、タブレット端末による電子ノート?が使われる日もすぐそこまで来ている。
ある地区では、コンピュータ室にパソコンを置くのではなく、デスクトップパソコンの代わりにタブレット端末を置こうと検討しているとも聞く。
タブレット端末の教育利用の方法を検討することは急務であろう。
さて、ICT活用について、ICTに精通した方がソフトやハードを開発することはもちろん重要なことであるけれども、そのときに、ぜひ現場のささやかな声をリサーチして欲しいと思う。

たとえば、当たり前のことだけれども、タブレット端末を使った学習では、次の視点を生かすことは不可欠だ。
・タブレット端末を使うことで、学力が効率的に上がることが期待できる。
→タブレット端末の機能を使うことで、それ以前に行われてきた「非効率的な」学習が「効率的に」行われるという見通しが立たなければいけない。
タブレットの操作や準備が煩雑で、かえって非効率的だったりしてしまっては意味がない。時間がかかりすぎたり、大した情報量ではなかったり、学習が充実していなかったら意味がない。
タブレットを使っているという「華々しさ」「目新しさ」があるうちは、現場でも使ってもらえるかも知れないけど、そのうち「やっぱり使わない方がましだ」と飽きられたらおしまいだ。

・タブレット端末を使うことで、今までできなかったことができるようになる。
→たとえば、タブレット端末などをはじめとするICTの特徴はいくつかある。
・思考を補助してくれる
(計算、OCR、検索機能などの情報処理)

・大量の情報を保存できる。
(これはいうまでもない。電子書籍などのコストも印刷メディアに比べて格段に低い)

・マルチメディアに強い。
(動画、画像、音声、ARなど)

・インターネット等で相互交流できる。
(学びのネットワークが格段に広がる。調べたり、発信したり、交流したり)

つまり、時間、空間という限界を突破し、人間の情報処理を助け、多様なメディアの越境ができるという点が最大の特徴である。
それらを生かして、今まで考えもしなかったような学習が展開できれば「タブレットを使ってよかった!」ということになるはずだ。

一方、タブレット端末を使うことのデメリットはどこになるのだろうか?
とっても卑近な例だけど「多機能すぎる」「便利すぎる」という点も、ひょっとしたらあるのではないだろうか。

たとえば、本校ではタブレット端末を使った授業はそれほどやられていないけど、電子辞書を使うことは授業の中で奨励している。
電子辞書を常時使用することで語彙や知識などが増えるので、とても重宝している。
しかし、最近の電子辞書は辞書機能だけでなく、さまざまな機能がくっついている。
・動画や画像を保存する機能
・音楽を聴ける機能
・インターネットができる機能
・イラストを描く機能
など
もちろん、機能が多くあればあるほど便利なのだけれども、授業内容とは関係のない機能がありすぎるのも、教師としては困りものなのだ。実は、電子辞書を持ち込むことで、授業中に生徒がこっそり自分のお気に入りの動画を眺めていることが学校で問題になったこともある。
これは卑近な例に過ぎないけれども、多機能にすればするほど、学習者の自由度は上がるけれども、裏返せば「サボる自由」「気が散る自由」「勝手なことをする自由」も増大するというデメリットもある。
学習を効果的にするためには、教師は生徒に与える情報を制限し、「自由」を上手くコントロールすることが、授業技術では大切な要素でもある。
たとえば、授業の中で発言する時に、なぜ挙手を求めるのだろうか。これは、発言したい時に発言させるという「自由」をコントロールすることで、教師の誘導で、生徒の発言を効果的に取り上げるという一斉授業の技術である。
黒板を用いる最大のメリットはどこにあるのだろうか? それは、教師が生徒とのインタラクティブ(やりとり)の中で、臨機応変に授業内容を組み替えていくことができる点にある。
学習内容に応じて学習者の「自由」をコントロールできるという要素や、臨機応変に授業内容を組み替えていくという視点では、まだまだICT活用の授業では不十分な点であると思う。
この二つの点において、タブレット端末よりも、黒板とノートのほうが圧倒的に優位だ。
……まあ、それでも、ノートや教科書に「落書きする自由」は残されているんだけれどもね。

と、勝手なことをいい散らかしてみましたけれども、「最近のICTはそんなもんじゃない!」という情報があったら是非教えてください。