Ⅰ 単元名 わたしの「学問のすすめ」~古典が語る「学び」のヒント~
Ⅱ 単元の考察
新学習指導要領では、古典指導は「伝統的な言語文化に関する指導」へと転換した。今までの古典指導のねらいであった「古典に親しみ、文化や伝統に関心を持つ」ということから発展させて「言語文化を享受し継承・発展させる態度を育成すること」を重視するように内容が構成されている点が大きな違いだといえる。言語文化を享受し継承・発展させる態度を育成するための、これからの伝統的な言語文化に関する指導のあり方について授業を通して検証していきたい。
本単元は「学ぶこと」というテーマをめぐって複数の古典を読み、互いに感想交流をし、古典の言葉を活用して自分の考えをまとめるという学習活動を展開する。感想交流、情報活用といった言語活動を通して、古典を読む力を確かなものにしていく。
古典を読む力とは、たんに古文を読んで理解するということにとどまらない。古典を解釈し、それをもとに感想を述べたり、いくつかの古典を必要に応じて読み、自分の考えを豊かにする力も古典を読む力には含まれている。また、多くの古典に親しみ、古典の読書生活を豊かにするという態度や古典を享受し継承・発展させるためには欠かすことはできないだろう。
本単元ではとくに「古典を読んで自分の考えを豊かにする力」に焦点を当てて授業を構成する。
この力は、次のような力に細分化することができる。
①古文の意味をつかみ、書かれている内容を理解する力
②古典のなかの考えを、現代に置き換えて理解する力
③古典のなかの考えと、自分の考えとを比較する力
④古典のなかの考えを取り入れたり、批判したりすることで自分の考えを豊かにする力
これらの力をつけるために、本単元では以下の点に留意して学習活動を構成した。
一つめは、学習テーマの設定である。古典を読み進めるために「学ぶこと」をテーマに設定してい
る。受験のための勉強に追われる生徒にとって「学ぶこと」は身近であるがあまり考える機会のない、意義あるテーマであるといえるだろう。「学ぶとは何か」「なぜ学ぶのか」「どのように学ぶのか」などのテーマは、生徒にとって関心を持って読み進めたり、自分の意見を述べたりすることが期待できる。
二つめはテキストの構成である。テキストは『論語』、伊藤一斎『言志四録』、福澤諭吉『学問のす
ゝめ』、を取り上げた。この三つの文章は、漢文(的)な文体を持っているところが共通している。
簡潔で、力強く、歯切れが良いこの文体は、音読して心地よく、簡略化された表現は含蓄に富んでいる。古典の言葉を読み自分の考えを表現するのに十分な内容と深さを持っている。古典に触れ、楽しむ段階から、解釈し、味読する段階へと移行するこの時期のテキストとして適切であるといえる。
三つめは、つけたい力に適した言語活動をとることである。複数の古典を取り上げて読む活動は、
自分の考えに活かせそうなものを選択させたり、読み比べたりすることで思考を深めることができる。
また、感想交流という場は、テーマについて考えを深め、古典から学んだことを表現する学習の場となる。単元の最後には、学習を通して学んだ古典を引用して文章にまとめる。古典を引用して自分の意見をまとめることで、自分の体験や意見とを関連付けながら古典を読む力を高め、古典にいっそうの親しみや愛着を持つことができる。
古典は、自分の生活の中で活かされてこそ、その価値を持つ。古典を読んで自己の考えを豊かにする学習活動を通して、より一層古典に親しみを感じ、古典の読書生活を豊かにし、古典を継承、発展させる態度を養っていきたい。
Ⅲ 単元の目標
(1)古典のなかの考えを読み取り、「学ぶこと」についての自分の考えを豊かにすることができる。
(2)複数の古典の中から適切な情報を得て、自分の考えをまとめることができる。
Ⅳ 指導計画
第一次
単元の流れを知る。
・日頃の「学ぶこと」を振り返り、テーマについて考える。
・本単元で取り上げる古典について知る。
第二次
「学ぶこと」をテーマに古典を読み、感想を交流する。
○『論語』『言志四録』『学問のすゝめ』を読み、内容を理解する。
○追求したいテーマについて参考になる言葉を「名言集」として書き留める。
○私の「学び」論を書く。(古典を引用して自分の意見をまとめる。)
○意見交流会を行い、自分の考えを深める。
第三次古典から学んだことを文章にまとめる。
○単元の学習を通して学んだことを「あとがき」として文章にまとめる。
○表紙・奥付を作り、『私の「学び」論』の小冊子を完成させる。